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マウスで同性の両親から仔、雄同士では初

Nature ダイジェスト Vol. 15 No. 12 | doi : 10.1038/ndigest.2018.181203

原文:Nature (2018-10-11) | doi: 10.1038/d41586-018-06999-6 | Healthy mice from same-sex parents have their own pups

Jeremy Rehm

哺乳類の発生には、母親由来のゲノムと父親由来のゲノムが必要だ。このほど、卵と精子のゲノム機能の差異の解析がさらに進み、二母性マウスだけでなく、二父性マウスも初めて作出された。

雌マウス2匹を両親とするマウスと、そのマウスが生んだ仔。 | 拡大する

Leyun Wang

このほど、雌マウス2匹を両親とする健康な仔マウス(二母性マウス)の作出に加えて、雄マウス2匹を両親とする仔マウス(二父性マウス)の作出にも初めて成功したことが報告された1。この二母性マウスは体が正常サイズで、成熟して自分の仔を作ったものもあったが、二父性マウスの方は、最長で生後約2日しか生存できなかった(註:最初の二母性マウス作出の報告は、2004年に東京農業大学の河野友宏(かわの・ともひろ)らの研究チームが行っており、同チームは2007年には、やや小ぶりだが生殖可能な二母性マウス作出も報告している)。

これらの仔マウスの作り方は、2018年11月1日号のCell Stem Cellに掲載された。この研究では、哺乳類の健康な胚の発生に必要とされる重要な遺伝的因子が、さらにいくつか明らかにされた。ただし、この手法をヒトに応用できるとは、研究者らは思っていない。

特定の鳥類種や魚類種、トカゲ種など一部の動物は、片方の性だけ、もしくは1個体だけで生殖可能だ。しかし哺乳類は、次世代の個体を作り出すために異性が必要である。

これは、遺伝的な「刷り込み」(ゲノムインプリンティングと呼ばれる)があるせいだと考えられている。つまり、DNAに結合して遺伝子のスイッチを切る、小さな化学的タグが付いているためだ。そうしたタグはこれまでに100個ほど見つかっており、その多くは胚の成長に影響を与える遺伝子で見られる。

生殖細胞のゲノムを雌雄で比較すると、一方の性でタグが付いている遺伝子の多くは、もう一方の性ではタグが外れている。1個の胚で同じ遺伝子群が両方ともタグ付き(つまり両親が同性の際に生じると思われる状態)になると、その胚は死んでしまう。

タグの削除

この問題を乗り越えるため、今回の論文1の著者である中国科学院(北京)の発生生物学者Qi Zhouのチームは、実験室で精子もしくは卵から作り出して培養した胚性幹(ES)細胞を使った。この種のES細胞は染色体セットを1組しか持っておらず、大半の細胞と同様に、化学的タグの付いた遺伝領域を含んでいる。

Zhouらは試行錯誤を繰り返し、また、同チームの以前の研究2で得られた成果も参考にしつつ、タグ付きの遺伝領域を何回かに分けて削除し、胚の発生が正常に進むかどうかを見ながら、取り除ける領域を絞り込んでいった。そして、雌2匹を両親とする仔マウスを作り出すために、雌マウス由来のES細胞1個を、別の雌マウス由来の卵に注入した。一方、雄2匹を両親とする仔マウスを作り出すためには、雄マウス由来のES細胞を別の雄の精子と一緒に、核を除去した卵に注入した。

両親が共に雌である場合、ES細胞の3つの遺伝領域を削除することで、29匹の仔マウスが健康な状態で生まれ、そのうち7匹はさらに仔を作った。一方、両親が共に雄の場合だと、12匹の仔マウスを誕生させるのに7つの遺伝領域を削除する必要があった。しかし仔マウスは、たった2匹が約2日間生きただけであった。

これらの研究結果は、哺乳類で雌雄の組み合わせ以外の生殖が起こらないようにしている最も重要な遺伝領域のいくつかを明らかにするものであり、また、「哺乳類の同性間で仔を作るための新しい明確な手法」も示していると、Zhouは話す。

リスクを伴うビジネス

ただし、この手法がヒトに応用できるかは疑わしい。「彼らが発生させた胚は、全てではないにしても大部分に異常があり、生存できないものだったのです」と、ワイツマン科学研究所(イスラエル・レホボト)の分子遺伝学者Jacob Hannaは話す。今回の研究では、雌2匹を両親とする胚が無事に仔マウスとして生まれた率は14%にすぎず、雄2匹を両親とする胚に至っては2.5%という低さだった。「この手法の臨床応用が認められる可能性はほぼないと思います」とHanna。

「子どもを作ろうとする場合、親は全ての要因が良い結果につながってほしいと切実に願うものです」と、カーネギー科学研究所(米国メリーランド州ボルティモア)の生殖生物学者Allan Spradlingは話す。しかし、この手法で生まれてきたマウスがどの程度病気にかかりやすいかなどを知る手だては何もなく、どの程度正常なのか分からないのだと、彼は説明する。

「こうした研究が、女性2人もしくは男性2人を遺伝学的な両親とするヒトが当たり前に誕生することにつながるとは思いません。ゲノムインプリンティングは十分に解明されておらず、同性2人を両親とするヒトを作り出すことはあまりにリスクが高いと思われます」とSpradlingは話す。

(翻訳:船田晶子)

参考文献

  1. Li, Z. et al. Cell Stem Cell 23, 665–676 (2018).
  2. Li, Z. et al. Cell Research 26, 135–138 (2016).

キーワード

Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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