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自閉スペクトラム症研究から「個性」の探求へ

大隅 典子

Nature ダイジェスト Vol. 14 No. 2 | doi : 10.1038/ndigest.2017.170220

脳や神経系がどのように発生・発達するか、その仕組みを研究してきた大隅典子・東北大学大学院医学系研究科教授。近年は、自閉スペクトラム症の研究にも取り組んできた。2016年7月、「個性」を創り育む脳の仕組みに挑むため、脳科学に加え、人文・社会系、理工系分野の力を集結した大規模プロジェクトを立ち上げた。科学で「個性」に正面から取り組む初めてのプロジェクトである。

–– 「個性」に関する新学術領域研究プロジェクト(文部科学省)の領域代表になられましたね。

大隅: 人間の「個性」とは何か、どのように形成されるのか。その解明に向けて、2016年にこの研究プロジェクトを立ち上げました。私は近年、自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(以下、ASD)の病態モデルについて研究してきましたが、その中で、「個性」を強く意識するようになったのです。

–– ASDとは、どのような疾患なのか、改めて教えてください。

大隅: ASDは神経発達障害といわれる病気です。詳しい病因メカニズムはまだよく分かっていませんが、脳の神経系が発生・発達するときに生じたちょっとした不具合が原因で起こると考えられています。この脳の発生・発達とは、産生されたニューロンが互いに複雑な配線を形成し合うもので、お母さんのお腹の中にいるときから生じ、生後も続きます。繊細で複雑な過程なので、さまざまな段階で不具合が生じる恐れがあるのです。

ASDについては、2007年頃からリスク遺伝子(や遺伝子座)が発見され始め、今では約800もが見つかっています。親から受け継いだリスク遺伝子に、さまざまな環境要因(エピジェネティックな作用)が加わった結果、脳の発生・発達での不具合が生じるといえるでしょう。

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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