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10億年以上地殻の中に閉じ込められた水を発見

Nature ダイジェスト Vol. 10 No. 7 | doi : 10.1038/ndigest.2013.130703

原文:Nature (2013-05-15) | doi: 10.1038/nature.2013.12995 | Reservoir deep under Ontario holds billion-year-old water

Jessica Marshall

地殻の内部に隔離された水から、微生物の活動を示す証拠が探索されている。

マンチェスター大学(英国)の地球化学者Chris Ballentineらの研究チームが、カナダの鉱山の地下2.4kmで、10億年以上も地殻の中に閉じ込められていた水を発見した。その水の中で何らかの生命が生きているのかどうか、まだわからない。それはともかく、水にはメタンと水素が大量に含まれており、それらはまさに生命の維持に必要な物質だ。

カナダ・オンタリオ州の深い鉱床から滲(にじ)み出す水は、10億年以上も地殻の中に閉じ込められていた。その水からは、微生物を維持する栄養素を含んだガスが湧き立っている。

Credit: J TELLING

数十億年前の鉱物の内部に1μm程度の空間があって、そこに鉱物が作られたときの水が閉じ込められていた例はある。しかし、割れ目や孔を自由に流れる水の供給なしに、地殻の中で数千万年以上にわたって隔離されていた水の例は、これまでない。

Ballentineは、「ひょっとしたら数千万年、場合によっては数億年前の水かもしれないと期待していました」と明かす。研究チームは、ティミンズ(カナダ・オンタリオ州)に近い銅・亜鉛鉱山の27億年前の硫化物堆積層の割れ目から流れ出る水を、坑内の空気に触れないよう慎重に回収した。

研究チームは、その水の年代測定に3通りの方法を利用した。いずれも、水が含む希ガスの多様な同位体の相対的な量に基づくものだ。測定の結果、その水は、周囲の岩石が形成されてからまもない10億年以上昔、ことによると26億4000万年も前から、地球の大気に触れていない(つまり地殻の中に閉じ込められている)ことがわかった。この研究成果は5月16日号のNatureに掲載された1

「きわめて特異」

岩石学地球化学研究センター(フランス・ヴァンドゥーヴル・レ・ナンシー)の地球化学者Pete Burnardは、「試料の同位体構成はきわめて特異なもので、論文中の説明は最も確からしいものだと思います」と話す。「現時点では、地殻の中に15億年前の水が閉じ込められていると判断するほかはないでしょう」。

その水が生命を維持するのに必要な成分を含んでいることから、Ballentineは今回の発見を「二重の意味で興味深い」と考えている。その隔離された水が供給されることで、生命が発生したとも考えられる生態系「隔離バイオーム」が生み出される、と彼は言う。研究チームは現在、その水が実際に生命を含んでいるかどうかを確かめようとしているところだ。

Ballentineは、推論の域を出ないことを認めながらも、その発見が火星の生命に関わる可能性もあると考えている。かつて火星の表面には水が存在し、その岩石も化学的には地球のものと何ら変わりはないという。「同じような水の流れが火星にないと決めつけることはできないはずです」。

(翻訳:小林盛方)

参考文献

  1. Holland, G. et al. Nature 497, 357-360 (2013).

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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