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宇宙のオタマジャクシ

アンドロメダ銀河や天の川などの巨大な渦巻銀河は、小さな銀河を吸収し、また周囲の空間からガスを取り込んで、大きく成長してきた。最近、風変わりな“オタマジャクシ型銀河”がいくつか観測され、天の川銀河がその最も明るい部分、つまり太陽や地球が存在する星の多い円盤部分をどのように形成したのかについて、新たな手がかりが得られた。

オタマジャクシ型銀河は明るく若い星を擁する“頭”の部分から、ほのかな長い尾が伸びているのが特徴で、1990年代に初めて見つかった。大半は地球から数十億光年の彼方にあり、宇宙が若かった頃は一般的だったことを示している。

カナリア天体物理研究所のJorge Sánchez Almeidaらは、地球から6億光年以内と珍しく近いところにある7つのオタマジャクシ型銀河を詳しく調べた。ラ・パルマ島の望遠鏡で観測した光を解析し、それぞれの銀河の異なる部分の速度を割り出した。この結果、多くは渦巻銀河の円盤と同じように回転していることがわかった。

だが、衝撃的な違いも明らかになった。天の川銀河の場合、酸素が最も豊富に存在するのは明るくて星の多い中心部であり、そこでは大質量星が酸素を作り出して超新星爆発によってそれを放出している。一方、オタマジャクシ型銀河のパターンは逆で、明るい頭の方が暗い尾よりも酸素が少なかったのだ。「これは非常に奇妙です」とSánchez Almeida。

Astrophysical Journal誌4月10日号に発表されたこの驚くべき発見を説明するため、Sánchez Almeidaらは銀河間空間に残っている原初のガスを引っ張り出した。宇宙誕生のビッグバンでは、酸素よりずっと軽い元素だけが生まれ、以来この銀河間ガスはほとんど変化していないと考えられる。このシナリオでは、酸素の乏しいガスの流れが生まれたての銀河円盤の一部に流れ込んで、新たに明るい星の形成を引き起こした。このため、オタマジャクシの頭は明るいが、酸素は乏しいというわけだ。

この考えが正しければ、天空のオタマジャクシは地上のオタマジャクシと同様、成長過程にある幼い生き物だということになる。「天の川銀河もかつてはオタマジャクシ型銀河だったのかもしれません」と、研究チームの一員であるIBMリサーチのBruce Elmegreenは言う。数十億年前、周囲のガスを集めて回転する銀河円盤を作り上げ、ついには、天の川銀河というスーパーパワーに成長したのだ。

翻訳:鐘田和彦

Nature ダイジェスト Vol. 10 No. 6

DOI: 10.1038/ndigest.2013.130605b