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システムレベルの代謝流量プロファイル解析は抗ウイルス治療の標的としての脂肪酸合成を同定する

Nature Biotechnology 26, 10 doi: 10.1038/nbt.1500

ウイルスは、宿主細胞の代謝ネットワークを利用して自己複製のためのエネルギーおよび構成要素を作り出す。我々は、液体クロマトグラフィー−タンデム質量分析法による流量測定法を開発し、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)が引き起こす代謝活性の変化を定量した。この方法では、13C標識したグルコースおよびグルタミンを培養哺乳類細胞に与えてメタボローム標識の動態を追跡することにより、細胞内の流れが確実に測定された。HCMVに感染させると、流量は解糖系など中心炭素代謝の大部分を通じて著明に増大した。それは、トリカルボン酸サイクルの流量および脂肪酸生合成経路への流出で特に顕著であった。脂肪酸生合成を薬理学的に阻害すると、HCMVおよびやはりエンベロープウイルスの一種であるA型インフルエンザウイルスは、ともに複製が抑制された。この結果は、近縁でない2種類のエンベロープウイルスの複製にとって脂肪酸合成が不可欠であり、システムレベルの代謝流量プロファイル解析によって抗ウイルス治療の代謝標的が同定可能であることを示している。

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