Nature ハイライト

幹細胞:異種間キメラ形成の障壁を克服する

Nature 592, 7853

異種間キメラ(すなわち、異なる生物種由来の細胞で構成された生物)を利用すれば、大動物でヒトの臓器を成長させ、移植用の臓器不足を打開できる可能性がある。しかし、そのようなキメラ個体の中でヒト細胞はほとんど生存できず、ヒト細胞が消失する仕組みについてもよく分かっていない。今回J Wuたちは、ヒトとマウスのような進化的に離れた生物種由来の多能性幹細胞を共培養すると、プライム型の段階では競合するが、ナイーブ型段階では競合しないことを明らかにしている。これは、in vivoでは、競合が着床後の胚で起こることを示唆している。著者たちは、この競合が「敗者」細胞のNF-κBシグナル伝達の活性化に依存して起こることを見いだし、NF-κBシグナル伝達を阻害するとマウス胚でのヒト細胞の生存率が高まることを示した。まとめると、この研究から、異種間キメラの細胞競合を引き起こす機構についての手掛かりが得られ、これは、進化的に離れた生物種間でのキメラ形成を改善する上でカギとなるだろう。

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