Nature ハイライト

材料科学:乱れているがランダムではない

Nature 578, 7794

プルシアンブルーとその類似体は、広く関心を集めている材料であり、例えば、電池材料、ガス貯蔵媒体、ゲスト応答性の磁気系、電子系、光学系の候補材料として研究されてきた。その実用性の中核となっているのは、空孔ネットワークによって促進される可逆的な質量輸送能で、これまでこの空孔ネットワークはランダムだと考えられていた。しかし、大きな材料中の欠陥を解析して欠陥の秩序をより詳細に明らかにすることは、技術的に困難である。今回A Goodwinたちは、多くのプルシアンブルー類似体の単結晶の合成と構造解析に成功したことを報告している。これらの材料の単結晶回折によって、弱いが高度に構造化された散漫散乱パターンが明らかになった。著者たちは、このパターンを、三次元二体相関分布関数解析とモンテカルロシミュレーションを組み合わせて解釈し、空孔はランダムに分布しているのではなく、相関とネットワークを持つことを明らかにして、正方平面構造や一次元ジグザグ構造などの明確な空孔モチーフを特定した。さらに著者たちは、空孔モチーフと結晶化学的考慮事項(電気的中性と中心対称性)や合成温度を関連付けることのできる空孔相互作用モデルを開発した。今回の知見は、プルシアンブルー類似体の化学的性質や合成ルートを調整して細孔連結性やそれに続く輸送特性を系統的に制御するための出発点を提示するものであると、著者たちは示唆している。

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