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コロナウイルス:SARS-CoV-2オミクロンBA.4およびBA.5分離株の齧歯類における性状解析

Nature 612, 7940 doi: 10.1038/s41586-022-05482-7

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)オミクロン変異株のBA.2系統は世界の多くの国々で優勢となったが、BA.4系統とBA.5系統の流行は、数カ所の地域で急速に増加している。BA.2系統は以前に流行した「懸念される変異株」よりも動物モデルでの病原性が低い。しかし、BA.2系統と比較した場合、BA.4系統とBA.5系統は、ウイルスの侵入に重要なスパイクタンパク質にさらなる変異を有しており、BA.4系統とBA.5系統の増殖能や病原性はBA.2系統よりも高いのではないかという懸念が高まりつつある。本論文では、野生型シリアンハムスター(ゴールデンハムスター)、ヒトACE2(hACE2)トランスジェニックハムスター、それにhACE2トランスジェニックマウスにおけるBA.4およびBA.5分離株の増殖能と病原性を評価した。齧歯類モデルではBA.2株、BA.4株、BA.5株の間で増殖能や病原性に明らかな違いは認められなかったが、以前流行したデルタ(B.1.617.2系統)分離株と比較すると、病原性が低いことが明らかになった。さらに、in vivoでの競合実験では、ハムスターにおいてBA.5株はBA.2株よりも呼吸器での増殖性が高い一方で、BA.4とBA.2の増殖性は同程度であった。これらの結果は、BA.4系統とBA.5系統の臨床分離株は齧歯類ではBA.2株と同様の病原性を有しており、またBA.5株はBA.2株よりもウイルスの適応力が高いことを示唆している。

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