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コロナウイルス:SARS-CoV-2デルタ株の状況特異的な出現と拡散

Nature 610, 7930 doi: 10.1038/s41586-022-05200-3

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の懸念される変異株であるデルタ株(Pango系統B.1.617.2)は世界中に広がり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界規模での再流行を引き起こした。英国でのデルタ株の出現は、不均一な免疫状況と非医薬品介入の緩和を背景にして起きた。今回我々は、SARS-CoV-2ゲノムについて英国の5万2992例と英国以外の9万3649例を一緒に解析してデルタ株の出現を再構成し、移動制限や社会的制約が変化する状況での英国へのデルタ株の持ち込みや英国全域での地域伝播を定量化した。人々の移動、接触追跡、ウイルスゲノムデータの解析から、2021年5月初旬にデルタ株拡大の地理的な中心がインドからより世界的なパターンへ移ったことが明らかになった。英国ではデルタ系統が1000回以上持ち込まれ、非医薬品介入の緩和に伴い国内で広がった。旅行者のホテル隔離によって、国外から持ち込まれたウイルスの国内への伝播は減ったが、その後の英国でのデルタ株の感染波を決定付けた伝播の連鎖は、移動制限が導入される前に始まっていたことが分かった。英国内での地域間の移動の増加によって国全体でのデルタ株の伝播が促進され、一部の都市では他の地域からの観察可能なデルタ系統の導入が2000回以上あった。その後は、ウイルスの域外からの持ち込みの数ではなく、地域内での人々の移動や交流の増加が、デルタ株のより速い相対的な拡散と関連付けられた。デルタ株の侵入動態は、接触パターン内の空間的不均一性に依存しており、我々の結果はオミクロン株(Pango系統B.1.1.529)など、現在や将来の懸念される変異株の伝播を減少させるための最適な空間的介入に役立つだろう。

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