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コロナウイルス:SARS-CoV-2デルタ変異株は抗体中和に対する感受性が低下している

Nature 596, 7871 doi: 10.1038/s41586-021-03777-9

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)B.1.617系統は、2020年10月にインドで見つかった。以降、この変異株はインドのいくつかの地域や英国で優勢になり、他の多くの国に広がっている。この系統には3つの主要なサブタイプ(B1.617.1、B.1.617.2、B.1.617.3)があり、これらはSARS-CoV-2スパイクタンパク質のN末端ドメイン(NTD)や受容体結合ドメイン(RBD)にさまざまな変異を持っていて、こうした変異がこれらの変異株の免疫回避能を高めている可能性がある。B.1.617.2はデルタ変異株とも呼ばれ、他の変異株よりも迅速に広がると考えられている。今回我々は、インドからフランスに帰国した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者1人からデルタ変異株の感染株を分離した。そして、モノクローナル抗体や、COVID-19から回復した人(以下、回復期の人と呼ぶ)あるいはCOVID-19ワクチンを接種した人の血清に存在する抗体に対するこの分離株の感受性を調べ、次に、この株と他のSARS-CoV-2株を比較した。その結果、このデルタ変異株は、バムラニビマブなど、一部の抗NTDおよび抗RBDのモノクローナル抗体による中和に抵抗性であること、また、これらの抗体はこの株のスパイクタンパク質に結合できないことが分かった。症状の発現後、最長で12か月の回復期の人から採取された血清は、アルファ変異株(B.1.1.7)と比較してデルタ変異株に対して4分の1の効果しかなかった。ファイザー社あるいはアストラゼネカ社のワクチンの初回投与を受けた人の血清は、デルタ変異株に対する抑制効果がほとんど認められなかった。ワクチンの2回接種を受けると、95%の人に中和応答が生じたが、デルタ変異株に対する力価はアルファ変異株に対する力価の3分の1〜5分の1だった。従って、デルタ変異株の拡大は、スパイクタンパク質の非RBDおよびRBDのエピトープを標的とする抗体の回避に関連している。

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