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コロナウイルス:SARS-CoV-2のスパイクD614G変化は複製と伝播を増強する

Nature 592, 7852 doi: 10.1038/s41586-021-03361-1

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)がヒトにおいて進化する過程において、そのスパイク糖タンパク質(S)にD614G置換が生じた。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)では、この置換を有する変異株が優勢となっている。しかし、この変異株がより優勢になっているのが、ヒトでの複製や伝播を向上させるような適応優位性を反映したものなのか、単に創始者効果によるものなのかは、まだ分かっていない。今回我々は、同質遺伝子系統のSARS-CoV-2変異株を使い、S(D614G)を有する変異株は、ヒト細胞表面受容体であるアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)への結合性を増強し、ヒトの気管支と鼻腔の初代気道上皮培養に加えてヒトACE2ノックインマウスモデルで複製を増加させ、SARS-CoV-2感染のハムスターやフェレットモデルで複製や伝播性を著しく増加させることを示す。我々のデータは、SのD614G置換は、in vitroでは結合性や複製をわずかな上昇させ、in vivoでは、特に伝播のボトルネック中に、実際に競合優位性をもたらすことを示している。従って我々のデータは、現在流行中のSARS-CoV-2ウイルスの中でS(D614G)を有する変異株が世界的に優勢であることを説明するものでである。

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