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コロナウイルス:クロロキンはSARS-CoV-2によるヒト肺細胞への感染を阻害しない

Nature 585, 7826 doi: 10.1038/s41586-020-2575-3

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)によって引き起こされ、そのパンデミック(世界的大流行)による死亡者数は、世界中で78万人以上に上っている(2020年8月20日時点)。抗ウイルス薬を迅速に開発するために、関連のない疾患の治療に使われていた薬剤が、現在COVID-19治療用にリポジショニングされている。クロロキンは抗マラリア薬の1つで、アフリカミドリザルの腎臓由来の細胞株であるVeroにおいてSARS-CoV-2の拡散を阻害することから、COVID-19の治療に使われている。今回我々は、SARS-CoV-2の肺細胞への侵入を活性化する細胞性プロテアーゼTMPRSS2を発現するように操作すると、Vero細胞のSARS-CoV-2感染はクロロキンに非感受性になることを示す。さらに我々は、TMPRSS2を発現しているヒト肺細胞株Calu-3において、クロロキンはSARS-CoV-2の感染を阻害しないことを報告する。これらの結果から、クロロキンは、肺細胞では働いていないウイルス活性化経路を標的としていて、患者内や患者間でのSARS-CoV-2の拡散を防御できないと考えられる。

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