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コロナウイルス:非ヒト霊長類におけるSARS-CoV-2感染に対するヒドロキシクロロキンの使用

Nature 585, 7826 doi: 10.1038/s41586-020-2558-4

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、急速にパンデミック(世界的大流行)となり、この疾患の治療に使用できる抗ウイルス薬やワクチンはまだない。いくつかの臨床研究が進行中であり、in vitroで抗ウイルス効果を示したリポジショニング薬(repurposed drugs)の有効性が評価されている。これらの候補の中で、ヒドロキシクロロキン(HCQ)は、COVID-19を引き起こすウイルスである重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に感染した世界各地の数千人に投与されてきたが、HCQがCOVID-19の治療に有効であることを示す決定的な証拠はない。今回我々は、in vitroおよびSARS-CoV-2に感染させたマカク属のサルにおいてHCQの抗ウイルス活性を評価した。HCQは、アフリカミドリザルの腎細胞(Vero E6)では抗ウイルス活性を示したが、再構築したヒト気道上皮モデルでは活性が認められなかった。我々は、マカク属サルでウイルス量がピークとなる前後に、HCQ単剤あるいはアジスロマイシン(AZTH)との併用といったさまざまな投与戦略をプラセボ投与と比較して検討した。HCQ単剤およびHCQとAZTHとの併用はどちらも、調べたどの組織でもウイルス量に有意な効果を示さなかった。HCQを曝露前の予防薬投与として使った場合にも、SARS-CoV-2の感染に対する防御効果は見られなかった。我々の知見は、単剤でもAZTHとの併用でも、ヒトにおけるCOVID-19治療の抗ウイルス薬としてHCQの使用を支持しない。

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