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コロナウイルス:縦断的解析から明らかになった重症COVID-19における免疫学的な誤作動

Nature 584, 7821 doi: 10.1038/s41586-020-2588-y

最近の研究から新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の病因についての手掛かりが得られている。しかし、疾患転帰の縦断的な免疫学的相関は分かっていない。今回我々は、中等症あるいは重症のCOVID-19患者113人において、免疫応答を連続的に解析した。免疫プロファイリングから、自然免疫細胞系譜の全体的な増加が明らかになり、これにはT細胞数の減少が伴っていた。発症初期のサイトカインレベルの上昇は、疾患転帰の悪化と関連していた。中等症COVID-19患者では、発症早期のサイトカイン上昇後に、1型(抗ウイルス)応答および3型(抗真菌)応答の漸進的な低下が見られた。対照的に、重症COVID-19患者では、疾患の経過を通じて、これらの応答の上昇が維持されていた。さらに、重症COVID-19では、インターロイキン5(IL-5)、IL-13、免疫グロブリンE、好酸球など、2型(抗蠕虫)応答の複数のエフェクターの上昇も同時に起きていた。教師なしクラスター解析から、増殖因子(A)、2/3型サイトカイン(B)、1/2/3型混合サイトカイン(C)、ケモカイン(D)を表す、4つの免疫シグネチャーが特定され、これらのシグネチャーは3つの異なる疾患軌跡と相関していた。中等症COVID-19から回復した患者の免疫プロファイルは、組織修復増殖因子を含むシグネチャーAのレベルが上昇していたが、重症COVID-19を発症した患者の免疫プロファイルは、4つ全てのシグネチャーのレベルが上昇していた。このように我々は、重症COVID-19および臨床転帰不良に関連する、不適応の免疫応答プロファイルに加え、分岐した疾患軌跡と相関する、発症初期の免疫シグネチャーを明らかにしている。

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