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コロナウイルス:回復期の患者におけるSARS-CoV-2に対する収斂的な抗体応答

Nature 584, 7821 doi: 10.1038/s41586-020-2456-9

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)において、これまでに、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の感染者数は数百万人に上り、数十万人が命を落としている。SARS-CoV-2の細胞への侵入は、ウイルスのスパイク(S)タンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)に依存している。今のところワクチンは存在しないが、防御には抗体が不可欠となる可能性が高い。しかし、SARS-CoV-2に対するヒトの抗体応答は、ほとんど分かっていない。今回我々は、回復期のCOVID-19患者149人について報告する。平均して症状発症後39日目に採取した血漿試料は、疑似ウイルスに対する半数中和抗体価のばらつきが大きく、試料の33%は抗体価50未満、試料の79%は1000未満であり、抗体価が5000を超えたのはわずか1%だった。抗体の塩基配列解読からは、非常によく似た抗体を発現するRBD特異的な記憶B細胞クローンが、さまざまな患者で増加していることが明らかになった。血漿の抗体価は低いものの、RBD上の3種類の異なるエピトープに対する抗体が、2 ng ml−1という低い半数阻害濃度(IC50値)でウイルスを中和した。結論として、COVID-19から回復した患者から得た回復期血漿試料の大半には、高レベルの中和活性は含まれていなかった。とはいえ、調べた全ての患者において、強力な抗ウイルス活性を持つRBD特異的抗体が微量だが繰り返し見つかったことから、このような抗体を誘発するよう設計したワクチンが幅広く効果的である可能性が示唆される。

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