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コロナウイルス:ヒトモノクローナルSARS-CoV抗体によるSARS-CoV-2の交差中和

Nature 583, 7815 doi: 10.1038/s41586-020-2349-y

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は、現在進行中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミック(世界的大流行)を引き起こした新興のコロナウイルスで、2020年5月6日の時点で、370万人以上の感染者と26万人を超える死者をもたらした。この人獣共通感染症ウイルスによるパンデミックの広がりを阻止するために、ワクチンや治療薬を見つけ出す取り組みは最優先課題となっている。SARS-CoV-2スパイク(S)糖タンパク質は、ウイルスの宿主細胞への侵入を促進し、中和抗体の主な標的である。本論文では、SARS-CoV-2のS糖タンパク質を標的とする複数のモノクローナル抗体について報告する。これらは2003年に重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)に感染した患者の記憶B細胞で見つかったものである。抗体の1つはS309と命名され、これはS糖タンパク質の受容体結合ドメインに結合することにより、真正のSARS-CoV-2ばかりでなく、SARS-CoV-2およびSARS-CoVの偽ウイルスも強力に中和した。我々は、クライオ電子顕微鏡および結合アッセイを用いて、S309は受容体への結合と競合することなく、Sarbecovirus亜属内で保存されている、グリカン1個を含むエピトープを認識することを示す。S309と我々が見つけ出した他の抗体を組み合わせた抗体カクテルは、さらに強力にSARS-CoV-2を中和し、また中和抗体エスケープ変異体の出現を抑える可能性がある。これらの結果は、曝露リスクが高い場合の予防薬や、重症疾患の防止や治療のための曝露後治療薬としてS309やS309を含む抗体カクテルを使用するための道を開くものだ。

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