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ウイルス学:コウモリ起源の可能性が高い新型コロナウイルスに関連した肺炎の集団発生

Nature 579, 7798 doi: 10.1038/s41586-020-2012-7

18年前の重症急性呼吸器症候群(SARS)の集団発生以来、原因ウイルスを保有する自然宿主であるコウモリからは、多数のSARS関連コロナウイルス(SARSr-CoV)が発見されてきた。これまでの研究で、一部のコウモリSARSr-CoVはヒトに感染し得ることが明らかにされている。本論文では、中国の武漢でヒトに急性呼吸器症候群のエピデミックを引き起こした新型コロナウイルス(2019-nCoV)の特定と特性解析の結果を報告する。このエピデミックは2019年12月12日に始まり、2020年1月26日までに、検査で確定したのは2794例(うち死亡は80例)に達した。集団発生の初期段階で、5人の患者から完全長のゲノム塩基配列が得られた。これら5例の塩基配列はほぼ同一で、SARS-CoVとは塩基配列に79.6%の同一性が見られた。我々はまた、2019-nCoVが、コウモリコロナウイルスの1つと全ゲノムレベルで96%の同一性を持つことを示す。保存された7つの非構造タンパク質の配列に対してペアワイズ解析を行ったところ、このウイルスがSARSr-CoV種に属することが分かった。さらに、1人の重症患者の気管支肺胞洗浄液から単離した2019-nCoVが、数人の患者の血清によって中和できた。注目すべき知見として、2019-nCoVは、細胞への侵入にSARS-CoVと同一の受容体、すなわちアンギオテンシン変換酵素II(ACE2)を用いていることも確認された。

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