中堅キャリア賞(Mid-career Achievement)

北野 宏明
1984〜1993日本電気株式会社、ソフトウエア生産技術研究所
1988〜1994カーネギーメロン大学、機械翻訳研究所、客員研究員
1993〜1996株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所、リサーチャー
1996〜2002株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所、シニア・リサーチャー
1997〜2000東京医科歯科大学、難治疾患研究所、客員助教授
1997〜2000ロボカップ・フェデレーション、会長
1998〜2003科学技術振興事業団 ERATO 北野共生システムプロジェクト、総括責任者
1998〜2001国立遺伝学研究所、客員教授
2000〜慶應義塾大学大学院理工学研究科、客員教授
2001〜特定非営利活動法人システム・バイオロジー研究機構、会長
2002〜2008株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所、取締役副所長
2002〜ロボカップ・フェデレーション、創設会長
2003〜2008独立行政法人科学技術振興機構 ERATO-SORST 北野プロジェクト、研究代表者
2005〜2008独立行政法人沖縄科学技術研究基盤整備機構 特別顧問
2006〜財団法人癌研究会 癌研究所 システムバイオロジー部、客員部長
2007〜クウジット株式会社、取締役
2008〜株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所、取締役所長
2008〜独立行政法人沖縄科学技術研究基盤整備機構 オープンバイオロジーユニット 代表研究者

「個別の発見も重要ですが、私はパラダイムを変える、当たり前でない事を当たり前にするということに大きな価値を見いだしています。」1991年、ロボットと人工知能の長期的発展の為にロボカップ(RoboCup)を構想、97年から世界大会が開催され、今では数千人の研究者と学生が参加する巨大国際教育プログラムに発展した。また、ロボットにデザインの要素を取り入れるという新しい仕事のカテゴリーを創出した。一方、同時期に「生命をシステムとして理解する」研究分野としてのシステムバイオロジー(Systems Biology)も提唱し、その発展に尽力してきた。これに関する個別の共同研究は、線虫の発生を完全自動追尾しデジタルデータとする顕微鏡システム、生物モデル記述言語の国際標準の開発など。現在は「ロバストネス」の理論を構築、特に抗がん剤の開発に応用している。

メンタリングで最も重要なのは、研究の技法ではなく、普遍的なものの考え方であると考えます。勿論、日常の研究活動を指導するなかで、いろいろな技法や知識も伝わるのですが、分野が変われば有用性が下がることもあります。それから、真剣勝負で高い理想を掲げ戦って行く姿を見せ続けることと、できるだけ本物の研究者との交流を行い、そこから学び取る機会を多くするということが重要です。広く人類の歴史の視点から自分の研究、さらには自分がより広く何をもって世の中に貢献できるのかの視点が必要です。

私の考えと対極なのは、今のアカデミズムのコミュニティーでの競争や評価を受ける事を重要視する考えです。「一日も早く論文を出版する事」に大きな価値観を見いだすなら、数日後には、他の研究者によって同様な研究結果が発表されることになる訳ですから、その研究の価値は数日間しか無いということになります。これでは世のため人の為の研究ではなく、自分のエゴを満足させる研究にすぎません。

学生や若手研究者の個性を見極める事も大切です。面白いチャレンジがあったとしても、そこにはリスクが伴い(本当は、チャレンジしない事が最大のリスクなのですが……)、そのリスクをとるかは本人の人生観や性格次第です。メンタリングは、彼らの人生をより成功に導く為のものであります。多くの学生や若手研究者は、実は研究以外のキャリアの方が成功する可能性が高いと思えます。研究以外のキャリアを目指しても、研究した経験は必ず役に立つはずです。

研究者となる人のメンタリングを考えるならば、最も重要なのは「変人・異才」を捜し出す事かもしれません。私のラボに来る場合、ある人に言わせると「誇大妄想的な」話を真に受ける人がその後伸びています。

真にオリジナルな研究や企てを行う人材は、育てる事はできません。ただ、発見するのみです。このような人材は、邪魔をせず、機会を提供し、対話の相手となる事以外をしてはいけないように思います。そのような人は、かならず私より優れているからです。議論はよいが、余計な事を押し付けてはいけない。そして、一日も早く独立させる事です。独立して、本当の研究者としての人生が始まるのではないかと思います。

一方で、派手では無いが、面白い着眼点をもつ研究者もいます。オリジナルな着想は徹底的にサポートして、ものにすることが重要で、それを基盤に次の大きなステップへと展開できるようになると思います。そもそも今まで誰も考えなかった事を考えて実現するのですから、何か普通ではない部分がある人々に違いないのです。

自分の反省としては、もっともっと「クレイジー」になることを執拗に要求しても良かったかも知れません。

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