推薦者の皆様より(Comments from Nominators)

受賞者にメンタリングを受けた研究者たちが、受賞者のどのような点を尊敬し影響を受けてきたか、 生の声をお届けします。

大沢研究室に入って驚いた事は、皆が大沢先生を「大沢さん」と呼び、教授室を持たず、長い黒板と大きな机が中央に置かれている大部屋の一角が先生の机のある場所だったこと。大沢先生はその机で仕事をされていることは殆ど無く、常に実験室で誰かを捕まえて話をされていました。

大沢スクールの一端にいる私ですが、指導教授である大沢先生と共著の論文を書いていません。そのようなことは、大沢先生は全く気に留めておられないように見えます。メンターの生き方そのものが私に無言の影響を及ぼしていました。

飄々としていて、実現しそうにもないとくよくよ考えて心配にするのがばからしくなり、楽しく研究していれば夢のような大きな課題でもいつかはできるかもしれないとその気にさせてくれます。

大沢先生は常に教え子の成果を喜び、世界の多くの知り合いに教え子の自慢をして回りました。そのお陰で私は世界でも早くから知られる事となり、その後の研究の展開に大いに役立ちました。

穏健なお人柄の持ち主です。怒った声を聞いたことが無いし、先生に叱られたといった話を聞いたこともありません。他人を批判することもなさらない。何事もひとに強制しないし、いつも変わらない態度でひとと接しておられます。

大沢先生の魅力は、第一にその話術にあります。“エピソード記憶”に優れているのだとご自分で言っておられるように、お話が(臨場感がある)具体的でしかも率直(ある意味で辛辣)なので、面白いのです。簡潔なスキームを絵に描いたり、たとえ話にしてまとめてくれるところも魅力です。

どのような問題にも興味を持ってもらえる。面白いと言ってもらえる。しかもそれに対するコメントが平凡でなく、大沢流の独特のものである。一方、ダメなものに対しては辛辣。研究成果のレベルの高さではなく、権威主義的なものに対して、辛辣な批判をされます。

研究に関する議論では、難しい理論についての理解が必要な場合はできる限りやさしくかみ砕いて説明して下さる。そのことによって理解基盤の異なる異分野の研究者とも議論が展開し、大沢先生自身にとっても新たな考えが浮かび上がることも多かったというお話を何度も聞かせていただきました。

大沢先生は学生や若手研究者と同じ目線に立ち、その研究テーマにおいて重要な要素を含む多くの示唆に富んだアドバイスやコメントを投げかけ、じっくり考えるチャンスを与えて後は任せるというスタイルを取られます。

1960年代は研究者を志したものの、実際に研究者として独り立ちを遂げた女性は稀でした。女性を引きつけるメンターは限られていますが、そのようなメンターは男性にとっても魅力的なメンターであることを、大沢先生は示されたと思います。

私の研究室を卒業した学生たちは、大沢先生と私との関係を通じて、直接研究上の指導(さまざまなおしゃべりも含めて)を受ける機会をえました。今でも相談相手になってもらっている人たちもいます。このように、大沢先生には非常に多くの「孫弟子」たちも育っています。

北野氏は荒唐無稽なアイディアに対しても(むしろそのほうが)思い切った資金投入をする一方、失敗に終わった場合にははっきりと責任をとらせます。細かいことには拘らず、大局的な価値を重視します。そして若手研究者を「研究課題の代表者」として積極的に世界に送り出します。このような「個を尊重する」「思い切りの良い」北野氏のメンターとしての特徴はおそらく、北野氏が日本の学術界の中で純粋培養された研究者ではないことに由来するのだと思います。

ERATO北野共生プロジェクトはまさに「共生」でした。上の階ではロボットにサッカーをやらせようと悪戦苦闘し、ロボットデザインをやり始めていました。下の階では「システムバイオロジー」といった「雲をつかむ様な話」を現実にするにはどうしようかを考え議論し、実験していました。このような異質なものが同居することの居心地の良さと刺激に接した経験は、現在自分自身が統括している研究チームでの研究環境づくりに役立っています。

組織を運営していく際に、北野氏から学んだ事が大変生かされています。若い人材への仕事へのモチベーションの持たせ方。理想を現実にする困難さとやり遂げる忍耐。またビジョンに従って世界中にネットワークをはり大勢の協力者と共同で仕事を進めていくやり方は、科学技術の現場だけではなくビジネスのあらゆる面に応用できています。「リーダーが先頭に立ってあらゆる責任を背負いタフに仕事を進める」北野氏から学んだ実学は今も精神的な支えになっています。

北野氏は科学の非常に広い分野について深い知識を持っています。また科学だけではなく、マネジメント能力も高く、常に冷静ではあるが、チャレンジングな判断をされます。

何事にもポジティブな姿勢は周囲の環境に「やれないことがない」という空気を生みだし、普通なら困難な事も前向きに取り組む姿勢を持たせてくれます。

北野氏は彼と話をした相手に必ず何らかの形で得をさせます。それが彼のたぐいまれな、世界的な「人脈」につながっているのだと思います。

彼はまさに「先見の明」とよぶべき多くの提案を彼の研究グループに投げかけます。それらは既存の科学の枠組みを大きく外れたものであったりするために、ほとんどの「既存の枠にはまった」研究者には突飛にすら見えます。しかしその持つ意味を真剣に考えて、本気で取り組み達成したときには、その人しか成し遂げていないオリジナルで全く新しい科学が生まれているのです。私の中にも、北野氏のした「突飛な提案」はまだいくつか残っており、それらは私の財産となっています。

優れた研究者であると同時に多くの若い研究者を引きつけるのは、そのビジョンの明快さとそれを実現させるために起こす圧倒的な行動力に他ならないのだと思われます。

Dr Kitano is a very generous and accommodating mentor who leads through his vision, creativity, and personal charisma.

北野氏の科学はとてつもなく楽しい。それはおそらく、「大きな科学」をする事が本来持っている喜びなのだと思います。

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