Nature Careers 特集記事

産業界へのいばらの道を切り開く

2008年7月3日

Gene Russo
Naturejobs editor

Nature 453, 1281 (25 June 2008) | 10.1038/nj7199-1281a

大学や大学院レベルの学生が産業界に進むためには十分な備えが必要である。先週、カリフォルニア州サンディエゴでバイオテクノロジー産業協会(BIO)の国際会議が開かれたが、バイオテクノロジー分野の労働力に関するさまざまなセッションにおいて、これが主要なテーマとなった。

講演者はさまざまな改善策を声高に述べたてた。カリフォルニア州クレアモントにあるケック大学院学長のSheldon Schuster氏は、同大学院の専門的な修士プログラムの成功について語った。科学のカリキュラムとMBAレベルの企業経営や金融のクラスとを組み合わせたプログラムである。同氏によれば、ケックの大学院生の97%が学位取得後6ヵ月以内に産業界で職を得たという。カリフォルニア大学サンディエゴ校ムーアズ癌センターのDavid Cheresh氏も、産学連携を促進するような職種に奨学金を支給しているUCディスカバリー・フェローシップについて説明した。最近もある特別研究員が、コンサルティングやネットワーク作り、初期資金集めで起業家らをサポートするイニシアティブを自らのキャンパスで立ち上げている。

また、コミュニティカレッジ(米国の公立2年制大学)が果たせる役割について強調する講演者もいた。サンフランシスコのバイオリンク・ナショナルセンターでは、コミュニティカレッジなどのカリキュラム改善や専門スキルの養成を支援しているが、同センター所長のElaine Johnson氏によれば、米国では4年制の学位取得者、一流大学出身者でさえ、産業界の新入社員レベルの実用的な研究スキルが備わっていないことが多いという。コミュニティカレッジならその隙間を埋めることができるというわけだ。

産業界も現場でのイニシアティブでサポートする必要がある。例えば、南サンフランシスコに拠点を置くジェネンテック社は、社内に短期契約のポスドクを100人雇用している。同社のDavid Chang氏によれば、契約が終了しても正規雇用の保証は一切ない。職が不安定だと考えるポスドクは研究に対して保守的になる傾向が強いからだ、と同氏はその根拠を説明している。ジェネンテック社のプログラムがどこまでも人に優しいわけではないが(同社では臨時雇用者を採用し、ポスドク同士のネットワークも構築している)先のイニシアティブと同様、バイオテクノロジー全体が成功するかどうかは設備や建物よりも人材にかかっている、という認識はある。

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