Nature Careers 特集記事

野心ある学際研究者は大学の枠を超えて考えよ

2008年5月22日

Gene Russo
Naturejobs editor

Nature 453, 421 (14 May 2008) | 10.1038/nj7193-421a

大きく称賛されている学際科学(インターディシプリナリーサイエンス)は直観的に人を魅了している。愚かで近視眼的な研究機関は理由付けに走り、昔から専門分野間の交流もない。周辺で何かしらの発見があった場合、生物学的な原則は自然科学の洞察を必要とし、化学の問題は生物学者からの情報提供を必要とする。重要なのは慣習を一笑に付すことである。

しかし、学際センターの真の価値については懐疑的な見方もある。学際的などという言葉はちょっとしたキーワードとして流行しているだけであり、ウィスコンシン大学マディソン校の科学史家、Rogers Hollingsworth氏が言うように、「大規模な研究組織にはとてつもない惰性があり、個人は自分が受けてきた教育に、また過去にやっていたことに大きな既得権を持っている」というわけだ(Nature 451, 872–873; 2008参照)。

「軍拡競争」のインフラの一環として、研究機関はリスクを取って最先端の学際施設を建設しては注目を集めよう、資金や逸材を惹きつけようとしているが、健全な科学、または目新しい科学などほとんど生まれていない。ピアレビュー委員会はそう簡単に学際的な実績を認めないだろうし、審査委員会も伝統的な分野を専門にしていない候補者を門前払いにするかもしれない。今週の特集で詳述しているとおり、学際的な教育を期待している若年科学者は、大学院課程が新しくなったとはいえ、さまざまな課題に直面している(422ページ参照)。

しかし、こうした考えの前提にあるのは、若き学際研究者の第一の就職先が学術機関だということであるが、これは次第に事実と異なってきている。大学や学術研究機関の求人数は、学際的な職であれ他の職であれ、多くの国で減少しているが、科学者の失業率は低くなる一方である。また、科学の学位取得者は大学でなくてもすぐに職を見つけることができる(Nature 452, 777; 2008参照)。政界や産業界などは科学者を必要としており、さまざまな分野がどう横断しているかを知っていれば有利にもなる。代替燃料やワクチンの開発など、科学関連の社会問題には学際的な視点からの解決がますます求められている。学際センター卒業生には十分なチャンスがあるはずだ。ただ、もしそうであれば、学際センターはけっして単なる一時的な流行にはとどまらないことを証明できるはずだが。

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