全米ポスドク協会、給付金アップを求めるキャンペーンに着手
2008年5月8日
Gene Russo
Naturejobs editor
Nature 453, 129 (30 April 2008) | 10.1038/nj7191-129a
全米ポストドクトラル協会は、NIH(米国立保健研究所)が支給するポスドクの給与の動向に不満を抱いている。そして、同協会にとっては異例のことだが、この一件が議会において審議されている。
米科学アカデミーは2000年、NRSA(国立研究サービス賞)で知られるNIHのポスドク支援制度を通じてポスドクの給与を年10~12%引き上げ、新人ポスドクの目標給与である45,000米ドルを目指すべきだと勧告した。NIHはこの勧告を受け入れると同時に、ポスドクの給付がこの目標額に達すれば、引き続きインフレや生活費調整をスライドさせて上げていく、とも述べた。
しかし、約束の引き上げは実現していない。2002年度から数年間は給与も10%ほどアップはしたが、2007年度、2008年度は同水準にとどまっている。2009年度にいたっては、ブッシュ大統領がわずか1%アップを要求している。現在、NIHのポスドクの初年度給与はわずか36,996ドルである。そこで全米ポスドク協会はNIHに掛け合ったのだが、NIHは議会に諮問したのである。現在、同協会では国会議員に書簡を送って訴えるよう、職員たちに働きかけている。同協会にも言い分があるというわけだ。とくに多くの研究所では、NRSAの給付をベースにポスドクに給与を支払っているのである。
だが、昇給が必ずしも仕事の満足度を上げる最善策とは限らない。シグマXi(サイ)という科学研究団体が実施した調査の結果によると、職場の満足度と給与水準とはあまり関係がないと報告されている。同団体によると、これはポスドクの意欲を駆り立てているのが現在の給与ではなく、将来の雇用見通しであるという見解と一致している。仕事の満足度でより重要なのは、指導教官と一緒に新人ポスドクが携わることができる研修機会や将来計画の数といった要因である。ポスドクも十分な待遇を受けるべきである。とはいえ、十分な研修、有益なアドバイス、そして十分な将来の雇用機会を確保するための闘いのほうが、給与闘争以上にやりがいのある、そして激しい闘いなのかもしれない。
英語の原文:US National Postdoctoral Association campaigns for stipend boost