Nature Careers 特集記事

バンガロールの驚くべき格差

2008年4月10日

Gene Russo
Naturejobs editor

Nature 452, 659 (2 April 2008) | 10.1038/nj7187-659a

私がバンガロールのホテル(意外にも豪奢な建物)にチェックインすると、客室まで丁寧に案内された。数分後、こぎれいな白いイブニングジャケットを着込んだ紳士風の男がドアの前に現れた。「スイカジュースをお持ちいたしました。」男はそう言うと、部屋に入ってきて机の上にジュースを置いた。「お客様の執事を務めさせていただきます。御用の際には何なりとお申しつけください。」男は壁の赤いボタンを指さした。そこには「執事」というラベルが貼ってあった。男は自分の名刺を差し出した。名前の下には、きちんとした筆跡で「執事」と書いてある。私は少し驚きながらも笑みを返した。男はトレイを片手で持ちながらお辞儀をし、愛想よく笑って部屋を後にした。

インドの大半がそうなのだが、バンガロールは格差が激しいところである。私が宿泊したホテルは、出張してくるビジネスマンが主な客層だが、これは活気もなかったこの都市にIT企業やコールセンター(最近ではバイオテック企業)が急増したことで生まれたサービス産業のひとつである。インドの多くの都市と比較してみると、バンガロールは豊かである。ただ、インフラが必ずしも相応に整備されているわけではない。人口増加によって道路は人や車でごった返し、悲鳴を上げている状態である。乱雑な都市計画では、いくら新しい国際空港がオープンしても、その空港と市内とを結ぶ道路が未完成のまま、ということも考えられる。

私はスイカジュースをすすりながら、バンガロールに来るべきか悩む外国人科学者について、国内に留まるべきか国外に出ていくべきかを判断しかねる自国の科学者の見通しについて考えた。まだまだ多いとは言えないものの、バンガロール地方の企業や研究所で仕事や研究を始める外国人は増えている。一方で、バンガロールにある一流のインド科学研究所の生化学者、Uptal Tatu氏は、ドイツのマックス・プランク研究所のような組織の代表が彼の研究所を訪れては不合格になったインド人と面接し、数人を海外に誘致している、と話す。またTatu氏によると、博士号を持つインド科学研究所の学生で、ポスドクとして国を出ていった者は、インドに戻ってきていないそうだ。

だが、やはりバンガロールに戻ってくるインド人もいる(P.660を参照)。バイオテック企業の成長と快適な大学のキャンパスを礎に築かれたこの都市も、数年後には外国人科学者にとってさらに魅力的な研究拠点になるはずである。空港と市内を結ぶ道路が完成していればの話だが。

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