政策立案者が専門家に追いつくことを前提に、疾病予防を研究者の肥沃な大地へ
2008年4月3日
Gene Russo
Naturejobs editor
Nature 452, 497 (26 March 2008) | 10.1038/nj7186-497a
米国は2030年までに「保健維持機構」(HMO)を「健康生活機構」に変え、生物医学センターに、向上心のある医学者や生物医学者の全員参加を求める「保健学校」を設置すべきである。また、2030年までには議会命令と官民の努力に支えられた「国民健康促進戦略」を打ち出すことが望まれる。
これは3月19日にワシントンDCで開かれたフォーラムで保健政策では定評のあるリーダーたちの口から飛び出した青空的な案である。最初の提案は米国立衛生研究所(NIH)所長のElias Zerhouni氏から、次に、米疾病対策予防センター(CDC)所長のJulie Gerberding氏から、そして最後に、米国退職者協会(AARP)の最高責任者のWilliam Novelli氏から出たものである。医療改革のアプローチについて詳しい説明を求められると、彼らをはじめ多くが、病気の治療や途方もない医療費の削減においては予防が最も重要な役割を果たすと力説した。これは今週の特集でも強調されているテーマであり、ワクチン研究という活気あふれる分野にグローバルな機会があることが如実に現れている(498ページを参照)。
こうした米国の保健政策のリーダーたちに先見の明があるとすれば、これは新進の研究者にとって何を意味するのだろう。健康促進や疾病予防に関係した専門職をじっくり調べてみると、ワクチンと並び、社会学的・生物学的なリスク要因やバイオマーカーの研究のみならず、保健情報技術や公衆衛生、経済的・人種的な健康格差に関連した専門職まである。今後は最も注目を集めることになる分野である。
残念ながら、それ以外の米国政府関係者にはそれほど見る目があるとは言えない。理由はいくつかある。専門家の話と政策立案者の行動とは、やはり驚くほどかけ離れているのである。予防対策への投資が意味するのは、長期的な医療費の削減のはずだが、2009年度の米大統領予算要求では、CDCが4億3,300万ドル、すなわち7%の予算削減(Nature 451, 610-612; 2008を参照)を迫られたのだ。これでは先見の明があるアプローチとは言えず、多額の治療費を払う代わりに少額の予防費を払えば済むようにと、一層の努力を払う保健の専門家に間違ったシグナルを送ってしまうことになる。