NIHが研究助成金を増やしたら?
2008年4月1日
Gene Russo
Naturejobs editor
Nature 452, 381 (19 March 2008) | 10.1038/nj7185-381a
米国立衛生研究所(NIH)から研究助成金を獲得するため、科学者は相変わらず悪戦苦闘を続けているが(Nature 452, 249; 2008を参照)、その助成金はもっと均等に分配されるべきではないか、という疑問が湧いてくる。258ページのニュース記事がその可能性を探っている。また、数少ない選り抜きの科学者に対しては、さらに目を見張るほどの数の助成金が与えられていることにも着目している。頭脳明晰で高学歴、能力もある多くの科学者はNIHから多額の助成金を獲得しようと奮闘している。一方で、昨年はすでに実績のある200人の科学者にそれぞれ6件以上のグラントが支給された。ある責任研究者に至っては32件、その他多くの研究者が8~9件のグラントを獲得している。
注目すべきは、いくつもの助成金を獲得した少数の科学者は、科学会議を主催し、研修ワークショップを運営するなどの成功を収めている。また、その各々のイベントに対する少額のグラントが総合的に獲得グラント数を増やす結果となっているようである。多くの責任研究者は複数のグラントを獲得するコツを心得ているというわけである。そしてその原動力も手段も持ち合わせているのである。
若年の科学者が研究施設を維持するのに苦慮しているという話を耳にすると、こうした状況は不公平ではないかと感じられるかもしれない。例えば、Jill Rafael-Fortney氏はオハイオ州コロンバスにあるオハイオ州立大学で筋ジストロフィーを研究している。彼女によれば、ごく限られた資金しかないため、研究施設の規模を縮小し、経験豊富なポスドクを手放さざるを得なかったという。彼女は、A Broken Pipeline?――米国の研究所と大学のグループが先週発表したレポート(http://www.brokenpipeline.orgを参照)――で大きく取り上げられた12人の若手生物医科学研究者の1人である。
研究助成金を少しでも増やすことを目指しつつも、NIH所長のElias Zerhouni氏は、受給者には支給されている各グラントについて少なくとも20%の時間を費やすよう求めることも検討している。ただし、より生産性の高い研究施設が酷使される理由はない。成果主義よりもニーズに基づいた制度が確立されれば、最善の科学がそれに値する資金援助を受けられなくなる可能性もある。残念ではあるが、これでは注目を集める論文をいくつも発表し、最先端のアイデアを持ちながら、しかも、米国有数の生物医科学研究所から助成金を獲得するという長年の夢を抱いた――そして今でもその助成金を待っている――意欲的な生物医科学研究者を元気づけることはできそうもない。