ハワード・ヒューズ医療研究所、若手生物医科学研究者への準備金交付プログラムを発表
2008年3月20日
Paul Smaglik
Moderator of the Naturejobs
Nature 452, 249 (12 March 2008) | 10.1038/nj7184-249a
昨年、米メリーランド州シェビーチェイスにあるハワード・ヒューズ医療研究所(HHMI)の職員は、資金獲得に悪戦苦闘する若手科学者の生の声を聴こうと、全米を巡回する「リス二ングツアー」に出た。「キャリアをスタートさせたばかりの科学者が列を作って並んでいる。アメリカには優秀な人材が豊富だが、誰もが最初のグラント(研究助成金)を獲得するのに苦心しているよ。」と、HHMIの主任技師であるJack Dixon氏は言う。Dixon氏によると、若手科学者からは「行列」「待機状態」という言葉が頻繁に聞かれたそうだ。特に、米国立衛生研究所(NIH)が個人の治験責任医師に交付する主な研究グラントR01について語るときに顕著であったという。
NIHのデータがそれを如実に物語っている。新グラント獲得の成功率は、2000年には26%だったのが、2007年には19%に低下している。また、グラント更新の結果も芳しくなく、2000年には50%だったのが、2007年には36%に落ち込んでいる。問題は優秀な科学者が不足していることではなく、資金不足である、とDixon氏は指摘する。過去5年間、NIHの予算はほぼ横ばいである。つまり、5年間グラントが問題なく交付されていたとすると、助成金の行き先は決定されているということである。これでは若手の治験責任医師が最も打撃を受けることになる。なぜなら、初めて応募する若手科学者のグラント受給率は経験を積んでいる科学者よりも低いからだ。その結果、初めてR01を支給される科学者の平均年齢は1980年には30代半ばだったのが、42歳と高くなっている、とDixon氏は言う。
「もしこれが基準だとしたら、最も働き盛りの年代の人材を確保できなくなってしまう。」とDixon氏は危惧する。HHMIは今週、この問題に対処するための計画を発表している。約3億ドルの資金プールから最大70人の若手科学者に6年にわたって助成金を交付するという計画である。ただ、受給資格があるのは、独立した研究施設の運営を2~6年続けている科学者のみである。すでにR01を獲得している科学者もグラントに応募することはできるが、複数の財団から資金援助を受けている科学者に受給資格はない。「研究助成金をさらに拡大したいと思っている。」とDixon氏は話す。
70人の科学者に助成金を交付したところで問題解決にはならない。Dixon氏もそれは認めているが、他の組織もこれに追随してくれること、また、NIHがもっと若年層の科学者をサポートする財源や資力を見出してくれることを願っている。