Nature Careers 特集記事

動物愛護団体の攻撃がキャリアへの道を阻む?

2008年3月13日

Gene Russo
Naturejobs editor

Nature 452, 121 (5 March 2008) | 10.1038/nj7183-121a

2月24日の午後、覆面をした抗議団体がカリフォルニア大学サンタクルーズ校出身の生物学者の自宅の外に集結するという事件が起きた。警察の報告によると、彼らは家に向かって罵詈雑言を浴びせ、玄関のドアを叩き壊し、その生物学者の夫を襲撃したようだ。犯人の身元は不明であるが、この事件は動物愛護活動家による犯行であることを示す特徴が見られた。しかし残念なことに、もしこれが事実だとしてもけっして珍しい話ではない。例えば、カリフォルニア大学ロサンゼルス校では、数日前、霊長類研究者に嫌がらせをしていた5人の活動家に対する保護命令の申し立てが認められている(Nature 451, 1041; 2008参照)。

過激な動物愛護団体の戦術として、研究者を恫喝する狙いがある。そうした活動家はどんどん厚顔無恥になり、ただ研究施設を破壊するだけではなく、研究者の自宅にまで押し掛けるようになってきた。「考えられない。こんなことが続くようなら、研究者は一瞬たりとも気が抜けない。」こう話すのは、アドボカシー組織である米国生物医学研究基金所長のFrankie Trull氏である。ただ、研究者が脅迫に遭った後に職を変えるという目立った事例もわずかながら起きているが、今のところこうした動向を裏付ける証拠はない(Nature 444, 808–810; 2006参照)。

暴力的な抗議活動や脅迫を議論や対話に導く手立てはない。したがって、人道的な動物研究に携わっている研究者も一致団結し、過激派の活動を確実に封じ込めるべきである。研究者がともに行動すれば、一般大衆にその研究の価値を説明することができる。また、脅迫の予兆があれば、それを同僚や管理者に迅速に伝えることもできる。アメリカの場合、研究者が情報公開法に基づいて自分の情報の開示請求がされているかどうかを学部長に聞くことも可能である。自分が活動家の標的とされているかが分かる場合があるからだ。また、大学側も事前に策を講じるべきだろう。標的とされそうな研究者を特定し、さらなる防衛策を提案できるようにして必要がある。そうすればキャリアを変える理由などないはずである。とはいえ、動物研究に携わる者は、高い認識を持ち、さらに防備を固めることを日常業務の一部にする必要がありそうだ。

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