Nature Careers 特集記事

科学のグローバル化は本当に進んでいるのか

2008年3月6日

Gene Russo
Naturejobs editor

Nature 451, 1135 (27 February 2008) | 10.1038/nj7182-1135a

グローバル化という言葉には、世界中の国々においての情報共有、設備投資、コミュニケーションの意味が含まれている。言い換えれば、グローバル化とは、経済と労働市場が統合されていくということである。ところが、それが科学となると、とてもグローバル化とは程遠いのが現状である。

今月初めにボストンで開かれた米国科学振興協会(AAAS)の会議では、複数のセッションでグローバル化への取り組みに関する検討が行われた。例えば、ノバルティス・バイオメディカル研究所所長のMark Fishman氏は、このスイスの会社がインドや中国で科学者を探している理由や自社の研究拠点をボストンに移した理由を説明した。要するに、求人である。ボストンの場合で言うと、同社はあまりリスク回避的ではない起業家のような人材を求めていたのだが、スイスではそういう人材がなかなか見つからない、とFishman氏は言う。

数人の講演者が注目することとして、潤沢な資金があり、国民も経済の多様化を求めている国々にアメリカの大学の分校が増えているという現実がある。例えば、砂漠の国カタールにはコーネル大学が医学部を設置しており、テキサスA&M大学はエンジニアリングを教え、ジョージタウン大学は海外勤務に関する講座を開設している。

しかし、ナイジェリアやメキシコ、インドネシアやチリに至っては、グローバル化が進んでいるかは定かでない。期待外れで有害にもなりかねない傾向のひとつに、こうした国々への相次ぐ私立大学の進出がある。また、認定を受けていない大学も多く、基礎科学よりも利益になるビジネス経営のカリキュラムを優遇する傾向も見られる。米国立科学財団で発展途上国向けのプログラムマネジャーを務めるWayne Patterson氏のよると、19ヵ国の代表に聞き取り調査を行った結果、ほとんどの代表が自分と同じ懸念を抱いていると言う。さらに、資金不足や就職する学生の科学離れが進んでいること、科学分野の人材がヨーロッパやアメリカに流出していることを懸念事項として挙げていた。

現段階で、科学はグローバルに展開しているどころか、地域的に、つまり集中的に展開しているに過ぎない。先進国が研究者の才能や革新から多大な恩恵を受けられる立場だとすれば、これは極めて残念なことである。

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