Nature Careers 特集記事

大学院生が労働者組合の結成に奮闘するのは、自分たちの利益を守るため、潜在的には損害を回避するためである

2008年2月21日

Gene Russo
Naturejobs editor

Nature 451, 861 (13 February 2008) | 10.1038/nj7180-861a

アメリカの大学では労働者組合を結成しようと躍起になっている卒業生がいるが、どこか道半ばといった感がある。大学院生労働者組合連盟(CGEU)によると、アメリカでは20校以上の大学で、院生がすでに団体交渉権を持っているという(Nature Vol. 428, P. 965; 2004を参照)。しかし、労働者組合を結成するというのはどうなのだろうか?確かに、授業助手や研究助手に報酬や職業給付、労働条件の面で言い分があるのは当然ではある。しかし、団体交渉に関与している学生は、大学側と不毛な衝突を起こす危険をあえて起こす必要があるのだろうか。

メリーランド大学カレッジパーク校の学生は、労働者の権利を求める運動を展開したばかりである。州議会議員のJamie Raskin氏は、大学院生と助教授が州立大学で労働者組合を結成できるような議案を提出している。ワシントン・ポスト紙も、大学院生は「出稼ぎ労働者」扱いされている、という同氏の言葉を引用している。労働者組合擁護派は、教授の下で仕事をしたり大学生を教えたりする学生には交渉のテーブルに就く権利があるのは当然であり、労働条件についても彼らなりの言い分があるはずだと言う。

対する大学側の広報担当者は、学生はあくまでも学生であり、従業員ではないと反論する。これはかなり強硬なスタンスだが、大学側は交渉のテーブルに就く時間と経費を節約したいということなのだろう。しかし、学生にとっては、労働者組合が絶対的な方法だとは限らない。雇用者と被雇用者の関係は、教員と学生の関係とは異なる。前者は敵対する関係であり、大学院生の狙いとは相反する可能性がある。アメリカの学生は学生でいるだけで精一杯であり、学位を取得するまでに6~8年かかる場合もある。弁護士との交渉や、たとえ長期戦が終わってもほんのわずかな利益を手にするだけという給与論争に追われる時間も根気もないと思われる。

しかし、今日の縮小する予算と大規模な研究所の時代にあっては、学生にはテニュア(終身雇用権)や出版、ますます削られる補助金のために自分たちが教授を助けるだけの安価な労働力ではないことを明らかにする権利がある。また、将来有望な学生が労働者組合の結成をプラスの属性だと考える可能性があることから、大学院生労働者組合は大学にとっても望ましいものになるかもしれない。ただ、学生は従業員であることにあまり執着しないよう注意すべきだろう。彼らの第一目標は、組合員証ではなく学位を取得することなのだから。

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