Nature Careers 特集記事

さまざまな異論がある英国Medical Research Council主力研究所のロンドン中心部移転による雇用への影響

2008年1月17日

Paul Smaglik
Moderator of the Naturejobs

Nature 451, 217 (9 January 2008) | 10.1038/nj7175-217a

英国Medical Research Councilの国立医学研究所(NIMR)移転について、5年にわたる議論の中でかなりの異論があった。昨年12月に発表された、昔からあるロンドン郊外の住所から都心への施設移転の決定により、5億ポンド(9.9億米ドル)という費用がかかり、動物研究所が都会に移ることになる(Nature 450, 926–927; 2006参照)。騒ぎが収まった後は、科学の職に対して移転が何に役立つかを考えるべき時である。

キャリアに関する最大の問題は、新施設がさらに雇用を創生するかどうかである。郊外の立地では19ヘクタールに散在していたものが都会では1.4ヘクタールに縮小されるが、同施設は現在のNIMRの約2倍となる1,500人を擁する予定である。しかし、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンおよび英国癌研究所の研究者らもこの建物を共有するため、新施設がさらに多くの科学職員を雇用するという理由だけで、その費用を正当化できるかどうかは不明である。

それでも、施設が境界領域研究を促進するという目標を達成すれば、雇用促進と就業機会増進のチャンスはある。例えばそこで癌治療の改善が発見された場合は、知的財産、臨床試験管理、規制、およびマーケティングにおいて補助的職業が生まれる。ロンドンの大学や病院に近いことも市の研究プロファイルを向上させ、その結果投資が増え、グローバルハブとしての地位が高まることになる。

しかし、施設とロンドンの他の研究機関が近いことが、少なくとも要因の一部だとして、施設外のどの職が創生されるかを評価するのは難しい。新施設が、単に場所を移すのみでなく、全体として新たな科学の職をさらに創出することになれば、前向きな移転になるだろう。しかし、正味の雇用の増加がなければ、またスペース縮小や動物・ウイルスの封じ込めに関する懸念のため施設運営コストが増加することになれば、反対論が正当化されることになる。この投資は高価なギャンブルである。雇用についてのみならず全体的な科学的能力に関して、その賭けが功を奏するかどうかは、予定されている施設オープンの2013年後もまだまだ分からないであろう。

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