非常勤教授の急増は米国の学界の将来にとって有益か
2007年12月6日
Gene Russo
Naturejobs editor
Nature 450, 755 (28 November 2007) | 10.1038/nj7170-755a
米国における終身雇用は様変わりした。1975年以来、米国の大学・学部のポストの数は倍増したが、終身ポストおよび終身コースにあるポストの割合は低下した。米国大学教授連合 (AAUP) が行った米国教育省データの解析によれば、フルタイムとパートタイムを含めた一時的なポストである「非常勤 (adjunct)」教授は、かつて私立および公立の大学では少数派であったが、現在では大半を占めている。1975年に非常勤教授は米国の学部の43%を占めていたが、2005年には教授ポストのうちのほぼ70%を占めている。
短期契約に基づくパートタイム労働力へのこのようなシフトにより、米国の高等教育の質が低下し、学問的な職業の選択から人々が遠のくことになりうる、と AAUP の女性広報官である Gwendolyn Bradley 氏は語る。非常勤スタッフは、終身スタッフおよび終身コースにいるスタッフより給料がずっと少なく、通常給付金を受けられず、また事務所スペースや事務的な支援にもありつけない場合がある。「私達は質の高い高等教育の維持に関わる転換点に来ています。それはパートタイムスタッフの適格性の問題ではなく、彼らが支援を受けられないためなのです」と Bradley 氏は語る。公立大学向けの州予算の減少が状況をさらに悪化させている。
しかしこの動向は見過ごされている訳ではない。17万人の学部メンバーを代表する米国教員連盟 (American Federation of Teachers) は今年11の州にて、この不均衡を是正するための法案を起草した。これは、学部課程の75%を終身職員および終身コースにある職員に担当させること、またパートタイム教員に対してわずかな給料ではなくフルタイム教員の給料に比例した給料を支払うこと(給付金も含め)、そしてそれらが実現した後に非常勤スタッフにフルタイムのポストへの道を開くことを、大学に要求するものである。
既にこれらを認識している大学もある。アナーバーのミシガン大学は非常勤スタッフの給料と給付金を増額しており、ニュージャージー州のラトガース大学はこの夏の労働争議を受けて終身コースのスタッフを100名雇用すると公約した。しかし、教育の質および魅力ある仕事の選択肢として、双方の観点における競争力を維持するために、米国の大学にはより広範な制度全体に及ぶ変革が必要である。
英語の原文:A spike in the number of adjunct professors may not bode well for US academia