インドのバイテクに対する訓話:誇大報道に囚われず就業機会を見定めよ
2007年11月29日
Gene Russo
Naturejobs editor
Nature 450, 579 (21 November 2007) | 10.1038/nj7169-579a
数ヶ月前、Naturejobsが受け取る一連の電子メールにはある傾向が存在することに気づいた。科学者や学生はバイオテクノロジーの仕事に関する助言を求めて「Ask an Expert」のコラム(http://tinyurl.com/3748bo)宛に寄せてくれる。これはもちろん自然なことなのだが、送り主のほとんどがインド出身者であり、またほとんどがそこでバイオテクノロジーの分野の修士号を取得していたのである。求めるべき傾向は苦労せずして見分けることができた。その結果は今週の特集(580ページ参照)に掲載されている。
インドのバイテク産業は活況を呈している。少なくともマスコミはそのように報道している。そのためインドの科学者はこの分野の就職について楽観的であると思われるのだが、残念なことに、この分野の雇用創出は、卒業生数の増加に対処するにはまだ不十分なのである。
ではこの誇大報道と現実との間の格差の原因は何なのか?現時点ではこの分野の仕事のほとんどは臨床試験関連の外部委託のようなバイオ関連サービスにある。卒業生が求め、この分野の推進力となりうる技術革新や発見ができる機会はほとんど得られない。また、この国の教育制度はこの分野の成長に追いついていない。設備、得られる実務経験、および資格のある施設要員数について、多くのプログラムは不十分である。修士の卒業生の多くは職業とするために、必要な技能を全く身につけていないのである。
政府はこのような足りない部分について認識しており、状況改善のための方途を模索中である。政府はインドバイオテクノロジー企業連盟 (Association of Biotechnology Led Enterprises)と共に、バイテクの修士卒業生に必要な実務経験を提供する「バイオテクノロジー教養学校(biotechnology finishing school)」を開設している。この動きは米国の多くの大学における「専門(professional)」修士号プログラムの導入に似ている (Nature 445, 458; 2007参照)。
現在教育を受けている若い研究者は、マスコミの誇大報道を鵜呑みにしないように注意すべきである。そして、おそらく自分の選択している学位取得プログラムで、自分のキャリアを深めるために必要な教育が受けられるという確認が、最も重要である。