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ノーベル賞の地域構成が変化している意義は?

2007年10月25日

Gene Russo
Naturejobs editor

Nature 449, 939 (17 October 2007) | 10.1038/nj7164-939a

毎年、ノーベル賞受賞者が発表されると、その発見が科学者らにより再評価され、その仕事の重要性が一般の人々に再認識されることから話題となる。しかし、この賞にまつわる一側面はあまりマスコミ報道の注目を集めない。それはノーベル賞の地域構成、特に受賞者の国籍と活動地域である。

今年の物理学賞では異変が起こった。8年ぶりに米国人受賞者または米国に拠点を置く受賞者が出なかったのである。過去10年の自然科学三分野のノーベル賞受賞者をみてみると、これがいかに珍しいことであるかが分かる。1998~2007年では、受賞者のほぼ60%が受賞時に米国で活動していた(そのうちの約30%は米国人ではなかった)。その他の受賞者の活動場所は、オーストラリア、デンマーク、フランス、ドイツ、イスラエル、オランダ、日本、ロシア、スイス、英国であった。

ノーベル賞を受賞機関ごとにみた場合も、この賞の歴史にわたり同じような数字となっている。受賞者数でランク付けした上位10校の大学中、米国以外では英国の2校しかない。最前線を行くのはハーバード大学であり、21名の受賞者を輩出している。

このような大雑把な分析で明らかにできるのは、先導的な科学者が最終的に落ち着く場所がどこかということだけであり、ある意味この数字には、大規模で資金豊富な大学の場所と、最高の教育への政治的奮闘や追求が行われている場所が反映されている。

科学の国際化の高まりが、ノーベル賞受賞者の地域構成を変化させるかは、大きな問題である。例えば2000年に日本は、2050年までに30のノーベル賞獲得を目指すと宣言した(Nature 413, 560–564; 2001を参照)。同時に現在では、若く優秀な研究者らは自らの教育やキャリアを高めるためにまず米国に向かう、というわけではなくなっている。実際のところ、最近の米国の競争法(competitiveness legislation)は科学における国家の優位性の回復を目的としているが、米国在住外国人によるノーベル賞受賞ではなく、まもなく海外在住米国人によるノーベル賞受賞があるかもしれない。

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