9・11後ビザ規制の影響から米国の大学院教育は復活したが、国際競争でどれほどの才能が流出したか?
2007年9月13日
Gene Russo
Naturejobs editor
Nature 449, 109 (5 September 2007) | 10.1038/nj7158-109a
2001年9月11日のテロ攻撃の余波で、米国はビザ規制を強化した。この厳重な警戒体制のために、米国の専門大学・総合大学に応募し入学が許可された海外からの大学院生の数が減少した。実際に米国大学院審議会(CGS)の調査によると、2003~2004年の間に海外からの留学希望者は28%減少し、入学許可者数は18%減少していた。米国大学院プログラムの活力源とみなされる、海外からの才能を失うことは教育機関および就職に悪影響を及ぼすと危惧した人は多い。
新たな手続き方法が整備されるにつれ、ビザ発給遅延の多くには対応が施され、海外からの応募学生数は増加し始めた。しかし、海外からの応募を阻んでいるのはビザ問題だけだろうか?それとも国際的な競争が高まる中、関心が薄らいでしまったためだろうか?恐らくはこれらの要因が共に働き、ビザ問題によって才能の流出が加速したのだろう。
8月27日に発表されたCGSの最新の数字に、その答えに対するヒントがある。米国の大学院が留学希望者に与えた入学許可の件数は、2006年から2007年までに全ての分野で8%増加した。昨年の12%の増加からは減少したものの、3年連続の増加である。生命科学分野の応募は18%増加し入学許可は11%の増加、物理科学分野の応募は12%増加し入学許可は8%の増加であった。ある程度まで大学は立ち直ったように思われ、つまりビザ規制は確かに有能な人材の流れを阻んでいたと言える。しかし同様に興味深いのは、米国の大学と国際大学との間の合同プログラムおよび二重専攻(dual degree)プログラムに関するCGSの報告であり、実に30%もの大学院がこのプログラムに取り組んでいる。競争は大学院教育の国際化にあるように見える。
現時点では、米国の大学院教育の制度はその魅力を失っていない。だがCGSの結果においては、海外からの学生は学位取得後、母国へ戻る可能性が高いという事実は考慮されていない。結局のところ、入学希望者だけではなく仕事を求める修士やPhDの修了者にとっても国際競争は高まっているのである。