気象科学への情熱が気象科学の仕事に結びつくとは限らない
2007年8月10日
Gene Russo
Naturejobs editor
Nature 448, 617 (1 August 2007) | 10.1038/nj7153-617a
7月23日の米民主党大統領候補討論会では、候補者がYouTubeを介して国民から寄せられたビデオでの質問に答えた。あるビデオでは、生きた雪だるまが気候変動を「この国の雪だるまにとっての唯一の重大問題」と称し、候補者にこれについて考えてくれと懇願していた。幼い雪だるまの方を向き、こう候補者に尋ねた:「息子が充実した幸せな人生を確かに送れるようにするために、何をするつもりですか?」
これは地球温暖化、エネルギー有効利用、核エネルギーに関する数分の討議を含む斬新な討論形式の一環であった。1つには元大統領候補のAl Gore氏と同氏の出演するオスカー賞映画「不都合な真実」によって、また1つには気候変動に関する政府間パネルによる地球温暖化に関する報告の報道によって触発され、これらの話題に対する米国民および政策立案者の注目度は急上昇している。
研究職に対してこれはどういう意味を持つであろうか?地球温暖化のための革新的な科学や政策による解決が多く叫ばれる中、科学者はより良い求人市場に目を向ける必要がある。しかし注意すべきことがある。今週号の特集記事の618ページで明らかにされるように、場所によって事情は異なっている。短期的にみれば最も有望な仕事は、企業が気候専門家の雇用に益々関心を向けつつある民間部門にあると思われる。企業は炭酸ガス排出を削減し持続可能な社会を作り上げる「より環境に配慮した」慣行を構築する必要に迫られているため、これはもっともなことである。これはある意味ではより責任を果たそうとする試みであり、またある意味では顧客や株主を満足させるための宣伝戦略である。
米国の学術機関は新たな学際的プログラムのより一層の教育と整備の必要性を認識してはいるものの、多くは大気科学の終身教授職を増員していない。欧州においても見通しは単純なものではなく、EUの第7次研究フレームワーク計画からの資金提供にもかかわらず気象科学の職が急増しているのはすき間領域に限られる。YouTube世代はこの問題の進展に寄与しているが、大気科学に関心を抱く若い科学者は自らのキャリアパスを考える上で慎重でなければならない。
英語の原文:Climate science buzz doesn't necessarily translate into climate science jobs