資金提供の新モデル登場、しかしその代償は?
2007年7月26日
Gene Russo
Naturejobs editor
Nature 448, 381 (18 July 2007) | 10.1038/nj7151-381a
科学および科学者への最も有意義な資金提供の形とはどのようなものだろうか?政府出資研究所の吟味として、先週我々はニューメキシコ州のLos Alamos National Laboratoryに目を向けた。今週号の特集記事(382ページ参照)では、英国Medical Research Council(MRC)の研究所の成功面と、その直面する課題について見てゆく。
これら2つの組織にはいくつかの共通点がある。すなわち、比較的安定した資金、優れた研究の伝統、共同研究者となり得る一流専門家の多さ、そして教育義務や大学での他の義務からの開放である。しかしMRCの研究所の際立った特徴は、その資金提供の仕組みにある。すなわち、科学者ら(上級研究員でさえも)は自身に次回の資金提供に見合うだけの価値があることを5年ごとに証明しなくてはならず、さもなければ外されてしまうのである。
研究所ではスタッフを他の職務やプロジェクトに配置換えすることも可能なのだが、実績不良のために留任できない者や、辞職することになる上級研究員も数名いる、と英国ケンブリッジのLaboratory of Molecular Biologyの所長Hugh Pelham氏は語る。留任しているグループリーダーの90%以上は問題なく5ヵ年審査をパスするであろうとPelham氏は見込んでいる。
バージニア州アジュバーンにあるHoward Hughes Medical Instituteの新しいJanelia Farmキャンパスでは、この資金提供モデルを試みたばかりである。研究者らは豊富な資源を持ち、自分のプロジェクトや緊密な研究者の輪にどっぷり漬かる。助成金申請書作成や教育義務はない。Janeliaの所長Gerald Rubin氏は、日常的に評価されることを厭わない一流の人材を取り込みたいという希望を率直に語っている (Nature 443, 128–129; 2006を参照)。Rubin氏は、革新的、学際的で型にはまらないリスクの高いプロジェクトを志向する。Nature 誌やCell 誌やScience 誌での発表がなくとも、自らの前進を実証する研究者達は契約を更新する、と同氏は語る。
このスタイルの資金提供は、研究者らが現在の栄光に満足してしまうのを防げる一方、モラルを脅かす可能性もある。これは科学にとって良いことであろうか?これは先進的研究を最優先するという決断を確かに促すことになる。科学者に関していえば、あるタイプの科学者にとっては良いことである。すなわち、そのタイプとは大学留任の保障がなくともそれを厭わず、先進性不十分とあれば出直しを受け入れるような、自信に満ちた研究者である。
英語の原文:Funding models can push the envelope, but at what cost?