Nature Careers 特集記事

「現実的な」仕事を見つける

2010年7月29日

Katherine Sixt
Naturejobs Posdoc Journal管理者

Nature 466, 519 (21 July 2010) | doi:10.1038/nj7305-519b

「代替」職業を選ぶのは普通のことかもしれないが、それで挫折感が消えるわけではない、とKatherine Sixt氏は言う。

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ちょうど私が高校に入学したころだった。大学進学を決めた年上のいとこを祖父が叱っているのを耳にした。「新聞を見てみろ。そんな専門的な仕事はあるのか?」と祖父は言っていた。現在「現実的な」就職先を探しているポスドクである私は、需要と供給の経済学の復習ができてよかったかもしれないと思ったものだ。このとき、初めて自分の職業について考えてみた。

科学者は次のような手順を踏むことに長けている。ほとんどが同じキャリアパスに固執すること。つまり、高校や大学で良い成績を取り、大学院で良い成績を取って論文を発表し、そしてポスドクとしてもさらに多くの論文を発表するという手順。これは、特にアメリカでは、有名大学で専任教員の職に就き、その後終身在職権のある職を得て、やがて名誉教授の地位に就くことを見込んだものだ。才能があり野心に燃える科学者なら、早い段階でこの軌道から離脱することなどほとんどない。良い成績を取ることは朝飯前であり、博士号取得前であれポスドクとしてであれ、仕事の口ならいくらでもあることを知っているからだ。しかし、教職への狭き門を目の当たりにした今、結局は全員に教員の地位が十分に用意されているわけではないことを認めざるを得ない。

こうした考えは、疲れ切ったポスドクのつぶやきではない。私は心から研究を楽しんでいるし、同僚や上司とソクラテス式議論をして、筋を通した対話によって異なる見解を説明するのを生きがいにしている。しかし、今日の大学の雇用状況は、教職を目指している人にとっては悲観的だ。米国立科学審議会の報告書『2010年版科学工学指標(Science and Engineering Indicators 2010)によると、2007年には、1993年よりも56%以上多い科学および工学の博士号が米国の教育機関から授与されている。博士号の数も1993年から2006年までに44%増えている。教員職と終身在職権のある地位の数は同時期にわずか10%増えただけだが、終身在職権のない教員職は51%増えている。

科学分野の博士号を持つ人にとって雇用状況が劇変しているのは知っている。「代替」職業を考えるのはますます普通になってきている。どの道も研究から私を遠ざけてしまうような気がすることもある。雇用状況の統計値だけを見ると圧倒されてしまうが、私の研究所のデータも、決して自分が望むようなスピードで動いていない。さらに、常に良い結果を出さなければ、というプレッシャーに対処できるのかどうかも分からない。懸命に働いても貴重な科学的結論を導き出せるとは限らない。また、新たな研究成果を上げた経験豊富な同僚の原稿が何度も却下されるのを見たこともある。科学的発見が好きだという自分の気持ちを違った形で満たすべきなのか。

それでも私は就職セミナーにこっそりと出掛けては、科学者が非伝統的なキャリアパスについて説明するのを聞いている。代替職業を選ぶという考えをまだ極秘にしている人もいる。多くの科学関係の博士号を持つ大学院生が特許弁理士やサイエンスライター、コンサルタントになるが、私はそれをバツの悪い思いで見ている。他の選択肢について検討するのは挫折ではなく、むしろ現実主義的なのだ。そう考えるよう、自分に言い聞かせている。高校で化学の授業を思い出しながら、過去12年にわたって大学や研究所に通ったことが研究所のトップへの道につながるのだ、と自分を偽ったりすることはできない。

祖父の言葉にうなずきながら、やり直しの効かない結果から少し時間を戻した。私は新聞も読まずに、代わりにノートPCを開くと、「現実的な」仕事が見つかることを願ってGoogleの検索ボックスに「生化学、博士号、職業」と打ち込んだ。

Katherine Sixtはメリーランド州ベセスダの米国立癌研究所・細胞分子生物学研究室のポスドク

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