人通りの少ない道
2010年4月15日
Andrea Schweitzer
独立コンサルタント
Nature 464, 945 (07 April 2010) | doi:10.1038/nj7290-945a
大学研究者への道はリスクに満ちているが、ほとんどの人は今でも熱心な科学者にとってはそれが一番安全な進路だと信じている。Andrea Schweitzer氏は違う方法を提案する。

多くの人が博士課程を修了するために犠牲を払うのは、生涯にわたって科学的探求とつながりを持っていたいという思いからだが、新米の博士科学者のうち、教員として終身在職権を得られる可能性があるのは3人に1人しかいない(Nature 439, 113; 2006を参照)。「科学を離れた」人の多くは欲求不満や失望を感じるかもしれない。また、幸運にも誰もが羨む終身的身分につながる職に就けた科学者でも、研究助成金やその他のニーズを追求していくと、実際に科学の研究に費やせる時間は限られてしまう。
私としては、別の進路を追求すること、またもっと広い展望を持つことを提案する。これは私が追求し、享受したものだが、確率は低いにもかかわらず、多くの人は大学が最も安全なキャリアへの道だと考えている。ところが、「自営」の科学者やコンサルタント科学者(プロジェクトマネジメント、執筆、独自研究、助成金審査などの仕事を引き受ける科学者)の人生と比較すると、後者の利点に驚かされる場合がある。
20世紀の間に高額な設備がますます科学の中心になってきたことから、研究も大学や政府の研究所と連携するようになってきた。現在は仲間どうしの仮想ネットワークやオンラインジャーナルを利用し、ほんの数日間を研究施設で過ごし、結果のデータセットにアクセスするだけで、研究の大半ができてしまう。生涯を通じて科学に携わっていく上では、もはや大学や研究所に身を置いたり、あるいは終身的な身分につながる職を維持したりする必要はない。最終的なキャリアの目標は大胆だが達成可能なものである。つまり「終身雇用を確保し」、終身的身分の教授として経済的自由を獲得し、科学の探求にできるだけ時間を確保することなのである。
リスクと代償
この進路には固有の代償がたくさんあるに違いない。大学研究者の場合には、高給の代わりに研究の時間を確保することができるが、けっして恒久的地位や家族を扶養できるだけの賃金が得られる保証はない。一方、自営の科学者の場合には、倹約や貯蓄を優先して研究時間を先送りにし、後に自由に研究時間を確保するが、自分が好きな研究の時間を思い切って確保することはめったになく、科学に触れることもなく、二度と戻れなくなってしまう危険がある。こうしたリスクを評価するには、大学研究者として自分よりも1~2段階上の科学者と率直に議論し、キャリアに関するオンラインのブログや掲示板を読んでみるとよい。
しかし、辛抱強く科学と係わっていく人の場合には、大学で常勤の職に就かずに科学に携わったまま生計を立てていく方法もある。もし自分が熱心さ、創意、つつましさ、そして良いコネクションを兼ね備えていれば(大学で生き残るためにもこれと同じことが必要になる)、研究分野に対する情熱を失うことなく、真に独立した科学者になることができる。
Andrea Schweitzerは世界天文年の米国プロジェクトマネジャーを努めたことがあるが、現在は自己負担で特別研究期間中