文献についてディベートする
2009年7月16日
B. Harihara Venkatraman、Dipankar Basak、Dhandapani Venkataraman
Nature 460, 295 (08 July 2009) | doi:10.1038/nj7252-295a
新たなアプローチが文献の更新、スキルアップやチームワークの確立を同時に活性化。B. Harihara Venkatraman、Dipankar Basak、Dhandapani Venkataramanの報告。
研究グループのミーティング、プレゼンテーション、抄読会、オンラインのブログ、そして文献演習。いずれも研究所が最新の科学論文に後れを取らないようにする常套手段である。しかし、多くの関係者からの掘り下げた投稿は概して少ない。文献の更新にしても、ポスドクや学生たちは良い刺激になる知的訓練というよりは雑用だとみている節がある。
全関係者間で忌憚のない議論ができるよう、我々は新たなアプローチを模索している。文献更新の方法として、週に一度のグループミーティング中にディベートを導入。このディベートによって、話題の文献について学ぶ機会だけでなく、チームワークやデータの発表に不可欠なソフトスキルを磨く手段も得られることになる。
大学生を含めた我々の研究グループは、さらに「賛成派」「反対派」「審査員団」の3チームに分かれている。メンバーは毎週、順番に違うチームに移っていく。審査員は、グループミーティングの1週間前に米国化学会誌(JACS)の最新版に論文として発表された研究報告書を選ぶ。賛成派チームは、新規性、重要性、幅広い関心、学術的な発表という観点から、報告書が発表基準を満たしていると主張し、反対派チームはほかの観点から反対論を主張。両チームとも報告書や先行文献に記載されているデータの批判的分析を論拠にしている。
各チームには、演説者1人につき3分間、最終弁論に3分間が与えられる。最終弁論が終わったら、審査員団がその論拠または報告書のいずれかに関連した質問ができる。各チームには、審査員団の質問に答え、他方チームの論拠に対して防戦するために2分間が与えられる。それが済んだら、審査員が無記名で投票して勝者を選ぶ。研究責任者は投票に参加しないが、論拠の妥当性、議論すべきだった要点、そして改善が必要な領域についてディベート後の意見を述べる。
どの報告書もJACSに発表済みのものだが、これまで審査員団は賛成派チームに好意的な見方をしたことがない。実際に我々は、ディベートの結果、報告書の漫画や挿絵の正確さを含め、数点の報告書の結論に異議を唱えたことがあり、中心的な著者に連絡をとって我々のディベート後の見解を伝えたという事例も2件あった。
我々のグループメンバーは、こうしたディベートを通してチームワークの能力、科学的な議論の分析能力、予断なく反対意見に耳を傾ける能力、あるトピックに対する個人的偏見を克服する能力、そしてデータに基づいて専門的に回答する能力を開発しており、建設的な批評を行い、健全な懐疑心を身につけることを学んでいる。こうしたスキルはメンバー自身の研究プロジェクトにとっても有益だが、彼らが選択した職業での成長においても有益である。
B. Harihara VenkatramanとDipankar Basakはマサチューセッツ大学アマースト校 化学科に在籍する大学院生、 Dhandapani Venkataramanは2人の指導教官