Nature Careers 特集記事

ES細胞の研究者を募集

2009年3月26日

Gene Russo
Naturejobs editor

Nature 458, 371 (18 March 2009) | doi:10.1038/nj7236-371a

科学倫理や病気治療を超えるES細胞研究への助成規制撤廃の影響。

米国のバラク・オバマ大統領は3月9日、ES細胞(胚性幹細胞)研究に対する連邦助成規制を撤廃したが、これは科学の進歩を支持する大統領が象徴的な意思表示をしたということにとどまらず、長らく喧伝されてきた(そしてまだ保証されていない)病気治療に対しても大きく踏み込むものとなった。大統領の声明は経済に直接影響を及ぼした。短期的には研究助成解禁によって治療法が発見される見込みはない。しかし、こうした動きが目先の職や投資をもたらすだろうと信じる理由がある。

オバマ大統領よると、ジョージ・W・ブッシュ前政権が「健全な科学か道徳的価値か、という誤った選択」を迫ったという。オバマ大統領は、この場合、健全な科学と道徳的価値とは矛盾せず、ES細胞の研究は人間の苦痛を和らげるための努力の一環であると主張。さらに大統領は、研究助成の解禁が、科学者に相応しい支援を提供するより大規模な計画の一部であることを示唆。科学者は「ごまかしも弾圧もなく」自分の仕事を続けることができるよう、無用な政治的影響力から遮断されるべきだというわけだ。

とはいえこの決定は、才能ある一流科学者の争奪戦に勝つためのものでもある。カリフォルニア州の努力はよく知られている。同州の30億ドルのES細胞研究イニシアティブは、州の予算が乏しいことから遅れがちではあるものの、能力ある生物学者を魅きつけている。他州も後に続こうと努力していたが、現在では、政府の助成金に道を譲るために自州の助成金プログラムの規模を縮小している(Nature 458, 130–131; 2009を参照)。韓国や英国、オーストラリアなどの国では、研究結果を追求するのみならず、研究者も求めている。

オバマ大統領は政府の不十分な支援の結果についても述べ、「有望な手段の検討は行われないままである。わが国最高の科学者の中には、研究を支援してくれる他国に渡ってしまう者もいる。また、そういう国々は、われわれの人生を変える進歩で大きく差をつけてくる可能性もある」と言う。大統領の声明は治療法発見に乗り遅れまいとする競争を促進し、現場への支援を再確認するものである。また、地球上で最高のES細胞の生物学者を見つける競争を激化させるものでもある。

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