Nature Careers 特集記事

非常勤教員が組織を結成

2009年3月19日

Gene Russo
Naturejobs editor

Nature 458, 245 (11 March 2009) | doi:10.1038/nj7235-245a

連合が非常勤や臨時の教員の大きな声になる。

大学の非常勤教員や臨時教員たちが試練のときを迎えている。すでに雇用確保を目指して闘ってはいるが、不況に直面した今、その地位はますます不安定になっている。契約労働者の給与は低く、諸手当がない場合も多い。米国の大学において、テニュアまたはテニュアトラック教員に対する非常勤教員の割合は、科学の教員を含め増加傾向にある。これは柔軟で将来的にも安上がりなプロの労働力への要望が増加していることと連動している(Nature 445, 678–679; 2007を参照)。米教育省の2007年の調査によると、現在、高等教育を受けた労働力の52%が、テニュアトラック以外の常勤の教員か非常勤の教員かのどちらかである。

米国の新たな組織作りの狙いは、こうしたスタッフが発言権を得られるようにすることである。米国の大学に勤める14人の非常勤教員は、電話会議の最中に全国非常勤教員連合(仮称)の結成を決めた。オハイオ州アクロン大学で英作文の講師助手を務める共同議長のMaria Maisto氏によると、リセッション(景気後退)によって組織の発足が早まったのだという。

こうして新たに組織を作ることが有益なのだろうか? 害になることはなさそうだ。米国教員組合など、米国では他の組織がすでに非常勤教員の権利を訴えて闘っているが、ここには内部の労働組合に属する教員もいる。また、米国大学教授協会では、非常勤の教員を常勤にシフトさせる方法に関する大学向けのガイドラインを作成中である。

しかし、こうした組織は非常勤教員の問題に専念しているわけではない。「テニュアトラックの教員の利害が必ずしもテニュアトラック以外の教員の利害と一致しているわけではなく」、州の中には組織作りが難しいところもある。「組織と労働組合の非公式なポジションとを統合したかったのです」とMaisto氏は言う。

しかし、他にも危機に瀕している問題がある。従業員に安心感や影響力がなくなったら、リスクを取らなくなり、現状を打破しようともしなくなる。非常勤教員が増えることは、革新性を秘めたアイデアを部門のトップに提示したがらない教授が増えるということであり、こうした傾向は研究所や学生に弊害をもたらすものである。この傾向に対抗できるような組織作りこそが、本当にやり甲斐のあることだと言えるのだろう。

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