専門家の助言
2009年3月5日
Gene Russo
Naturejobs editor
Nature 457, 1169 (25 February 2009) | doi:10.1038/nj7233-1169a
不況を切り抜けるに当たり、キャリア志向の科学者は専門家が各国の政府や研究機関に与える助言に耳を傾けるべき。
Nature 誌は先週、科学はリセッション(景気後退)にどう対処すべきかを論じた一連の論評を発表した(www.nature.com/recessionwatch を参照)。執筆した著名な思想家、政策立案者、そして科学者は、科学研究所や政府の各種プログラム、経済的手段にとって景気回復の助けになりそうな変化について鋭い分析を行った。その将来を見据えた論文の中には、個々の科学者やそれぞれのキャリアにとっての重要なヒントが隠されている。
ニューヨークにあるコロンビア大学地球研究所所長の Jeffrey Sachs 氏は、最貧国における持続可能なエネルギーの支援をG20(20ヵ国・地域首脳会合[金融サミット])参加国に呼びかけている。そうすれば「トリプルウィン」が実現できるという。つまり、富裕国には刺激になり、貧困国には開発になり、そして環境持続力は万人の利益になる。科学者はこうしたイニシアティブを雇用創出の可能性として期待すべきである。
日本を含めた各国政府は科学分野への財政的支援や教育に偏狭になりすぎないよう注意すべきである、と東京にある政策研究大学院大学教授の角南篤氏と黒川清氏は記している。気候変動や保健といった大きな問題に立ち向かうには、個々の科学者と同様、国も諸外国から見識を得ることが必要だ。
企業社会に身を置く科学者に対しては、オランダのエラスムス大学グローバル化客員教授の Noreena Hertz 氏が協力というメッセージを投げかけた。1929年の世界大恐慌など、かつての経済危機の際には、文化面で社会正義や共同体主義的な価値観への移行が起こった。したがって、現在の経済危機が続いている間に、企業は公共の利益に特化した地域社会のプロジェクトを提唱することにもっと前向きになるべきであろう。産業界で仕事をする科学者や新進の科学者も、「公」の意識がこれまで以上に重要になるということを理解すべきである。
しかし、英国下院議員の Ian Taylor 氏によると、科学者は自分たちのキャリア志向とは関係なく、科学や科学教育への追加投資を進んで提唱すべきだという。科学者は主張することに消極的で、支援が正当であるのは言うまでもないことだと決め込んでしまう場合が多すぎる、と Taylor 氏は述べている。今のような経済情勢にあって、これは大きな過ちになりかねない。