Nature Careers 特集記事

EUの技術革新

2009年2月19日

Gene Russo
Naturejobs editor

Nature 457, 921 (11 February 2009) | doi:10.1038/nj7231-921a

EUのイノベーションパフォーマンスはある程度向上。

欧州は技術革新で大きく前進している。それは外国人研究者を学会や産業界に呼び込んだ結果でもある。これは1月下旬に発表されたばかりの欧州連合(EU)の報告書の結論だが、昨今の景気低迷のなかで、果たしてEUはイノベーションパフォーマンスを引き続き向上させることができるのだろうか?

『欧州技術革新指標2008年版(European Innovation Scoreboard 2008)』では、特許権申請件数、研究開発(R&D)支出の水準、ベンチャーキャピタルの利用度、理工系の学位取得を目指す学生数といった指標を基に、欧州が引き続き日米にキャッチアップしていると結論づけている。同報告書の評価によると、2008年のEUのイノベーションパフォーマンスは米国と比べると-28であった。つまり、米国のパフォーマンスはEUよりも28%高いということである。2007年の-29よりは高いスコアである。日本と比較すると、2007年には-40、2008年には-38であった。

国別で見ると、最もイノベーションパフォーマンスに優れていたのがスイス、スウェーデン、フィンランド、ドイツ、デンマーク、英国であった。最もイノベーションパフォーマンスの「上昇率が高かった」のがキプロス、ルーマニア、ブルガリアであったが、こうした新規EU加盟国のパフォーマンスはまだEUの平均よりは劣っている(Nature 453, 558–559; 2008を参照)。2008~2009年の主要国の科学、技術、競争力に関する欧州委員会の報告書からは、EUが外国人研究者や米国からのR&D投資にとっては魅力が増しつつあることがうかがえる。また、EU域内の移動性が高まっていることも分かる。絶対数では英国、フランス、スペインが博士号候補生の目的国のトップである。英国と並んで外国人博士号候補生の割合が最も高いのがオーストリアとベルギーである。

こうした評価から、イノベーション重視のEUには明るい兆しが見えよう。しかし大きな警報も出ている。調査結果は現在の金融危機が発生する前に測定したパフォーマンスに基づくものだが、確かに各国の経済が苦しいと、着実なイノベーションの進展を目指すEUのトレンドにも陰りが見えてくる。おそらく当面の問題として最も相応しいのは、EU諸国がいかにして長期的に各国の科学系企業への打撃を最小限に抑え、それを維持していくかであろう。

「特集記事」一覧へ戻る

プライバシーマーク制度