ランキングの問題
2009年1月22日
Gene Russo
Naturejobs editor
Nature 457, 341 (14 January 2009) | doi:10.1038/nj7227-341a
満足できる職を探す。
先日、CareerCast.comという新しい求人サイトがアメリカの職業上位200種を発表した。興味深いことに、1位に輝いたのは数学者で、生物学者は4位であった。実際、科学関連職の中には極めて高得点の職がいくつかあった。統計学者は3位、物理学者は13位、気象学者は15位、天文学者は20位といった具合である。しかし、このランキングは仕事の満足度や必要な経験を考慮しておらず、これでは結果が不当に歪められてしまうことになりかねない。
このサイトでは、ランキングを作成するに当たって5つの大きな評価基準(環境、収入、今後の見通し、肉体的負担、そしてストレス)を設定した。ただ、いずれも「生物学者」になるために必要なもの、つまり、長年にわたる重労働、学校教育、ストレスや激しい競争などを考察しているわけではない。もしキャリアパス全体を考慮に入れてランキングを作成していたら、栄光を失う職業もいくつか出てくるはずだ。
さらに深刻なのは、デスクワークに偏っていることだろう。最低順位にランクされた職業をいくつか見てみよう。200位にランクされているのは材木業者、197位が船員、196位が救急隊員(救命士)となっている。ランキングではこうした職業が危険な仕事、またはきつい仕事に分類される傾向があるが、きつくても良い仕事だという場合もあるだろう。
例えば、評価基準の1つ、環境では「物理的要因」を計算に入れている。また、ストレスという基準には「思いがけない危険」「求められるイニシアティブ」「必要なスタミナ」が含まれている。得点が高い職業ほど順位が低いが、これは誤解を招く恐れがありそうだ。救急隊員は自分の仕事を、ストレスは多いが途方もなくやり甲斐があると考えているかもしれない。同じことが順位の低い、もっと厄介な日常業務を抱えているかもしれないフィールド科学者にも言える。Naturejobs でも多くのページを割いて、思考力だけでなく体力を要求されるような研究やポスドクの仕事に関する事例を多数紹介している(例えば、Nature 446, 226–228; 2007を参照)。
こうしたランキングは確かに興味をそそるが、バイアスが掛かっていないとは言えない。理想を言えば、仕事の満足度と関連づけたランキングにするべきだろう。結局のところ、最も満足できる仕事が最高の仕事と言えるのだろうが、必ずしもそれが最もストレスの少ない仕事というわけではない。数学者にしても、良い職業でないかと思われるかもしれないが、本人はそれで幸せなのか。材木業者は収入も低いし、毎日のように危険と遭遇している。しかし、ヒマラヤスギの濃厚な香りに包まれて倒れる木をよけながら、自分たちは惨めだと本気で思っているのか、ということである。