Nature Careers 特集記事

大学院への警告

2008年12月11日

Gene Russo
Naturejobs editor

Nature 456, 671 (3 December 2008) | 10.1038/nj7222-671a

研究所の入口に新大学院生向けにこんな警告文が貼ってあるとしよう――「警告:数年間懸命に働いても、キャリアの保証はない」。ドアを開ける前に立ち止まり、考え直す学生もいるだろう。多くの大学院生はアカデミックポストを探す際に待ちうける罠を認識しているが、いまだに自分たちの先行きがバラ色だと信じている者もいる。

ともあれ、ある研究所のウェブサイトを見れば現実の一端をうかがうことができる。「当研究所や他の研究所に応募する前に、いくつか肝に銘じるべきことがある」と、Sönke Johnsen 氏は自身のグループのウェブサイトに記している。ノースカロライナ州ダーラムにあるデューク大学准教授(生物学)の Johnsen 氏は、生物学の大学院は成功への確かな道でもないし、学生が間違いなく指導教官と同様のキャリアを達成できるわけでもないと強調している。同氏はこれを計算によってはっきりと示した。平均すると、1つの大学で1人の教授が同時に担当する学生は3人で、それぞれ5年間を要する。つまり、30年で18人の学生を担当することになる。最近では大学での職の総数がほぼ固定していることを考えると、実際のところ、この18人が1つの職を求めて競争することになるのである。

こうした警告文を掲げる研究所は増えるだろうか? Johnsen 氏がhttp://www.scienceblogs.com で寄稿者から受け取った肯定的な反応を見るかぎり、その可能性は極めて高い。賢明な指導教官なら口約束や空頼みを自分に許しはしない。とはいえ、研究所のボスたちは間違いなくこう言うだろう。博士号を持っている科学者、とくに大学以外の職でもかまわないという科学者にとっては、おおむね雇用は極めて安定している、と。

Johnsen 氏はさらに現実を把握する機会を提供している。ただし、これは就職口よりもクオリティ・オブ・ライフに関係がある。研究所で中身の濃い5~6年間を過ごす前に、自分の情熱を追求することだ。そうJohnsen氏は主張する。また、6年後にはしっかり元が取れるはずだなどと仮定して、社会的地位は高いが憂鬱な研究所に入るようなことはやめるべきだ。

この種の警告文を読んで理解したというのであれば、目の前の扉を開けて入っていく覚悟ができているのだろう。

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