NIHは新たな研究者への助成金受給を増やしたいが、果たしていくらに?
2008年11月27日
Gene Russo
Naturejobs editor
Nature 456, 417 (19 November 2008) | 10.1038/nj7220-417a
将来有望な生物医学者に貴重な政府資金を最も公平に配分するにはどうしたらいいのだろう? 米国立衛生研究所(NIH)所長を退任したばかりのElias Zerhouni氏は、自身が策定したイニシアティブの中で、新たな助成金申請者に対する最低限のサポートを公平な打開策の1つとすることを決定した。これは研究者と科学系企業の双方にとってメリットになる。
10月の後半、NIHは過去2年にわたって検討を続けていた規定を正式に採択した。狙いは、NIHからの受給経験のない申請者と一度でもNIHから受給経験のある申請者の受給成功率を同等にすることである。そのためにNIHでは、新たな研究者の申請をまずは別々の基金に定期的に入れ、NIHからの助成金の受給経験者と競合しないようにする。2009年度の新規助成金支給件数はNIHセンター全体で少なくとも1,650件に上る。
こうした動きは審査員の初回申請者に対するバイアスを低減することになり、驚くようなことではないが、現在および過去のNIHからの受給経験者、つまり、成功したことを立証しており、新たな申請を強化する多くのデータも提供できる者が概して健闘している、という明らかなトレンドも見られる。
しかし、Zerhouni氏の決定は必然であり、明白でリスクもない、とは言えなかった。初回の申請者に一層着目することで、過去の受給経験者、つまり、NIH助成金を一度でも支給されたことのある研究者は、わずかながら受給のチャンスが少なくなっている。Zerhouni氏は不当にこの制度をおもちゃにしているのだろうか? その結果、科学の質が影響を受けることになるのだろうか? 基本的に、その可能性はある。しかし、NIHの助成金受給者の平均年齢が上昇していることを踏まえると(1980年には37歳だったのが42歳になっている)、Zerhouni氏も、若年生物医学者には成功する相応のチャンスを与えなければならず、健全な科学系企業にとっても新しいアイデアやアプローチが不可欠であることを認識している。何はともあれ、熱心だが気落ちしている若き科学者にこの規定の意図するところは伝わっている、これは1つの目標だ、とNIHの委託研究副所長のSally Rockey氏は言う。「これがNIHの助成金をもらえる可能性があることを彼らに理解してもらう方法なのです」
英語の原文:NIH tries to improve the odds for new investigators. But at what price?