国際的な大学院研究倫理指針の策定は良案だが、調整や導入は難しい
2008年11月13日
Gene Russo
Naturejobs editor
Nature 456, 135 (5 November 2008) | 10.1038/nj7218-135a
大学院教育における研究倫理に焦点を絞った初の国際会議という名目で、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ、中国、オーストラリア、香港、ボツワナから代表者が集まり、世界中に氾濫している数々の偽造品や盗品を撲滅することで合意した。やや漠然としてはいるが、倫理指針作りは、少なくともこの問題に目を向けてもらうのに一役買いそうだ。
米大学院評議会の主催によりイタリア・フィレンツェで9月に開かれた会議では、「学問的誠実こそがあらゆる大学院の中心的価値である」など、大まかなコンセンサスが得られた。また、多国間にみられる倫理綱領の大きな差を縮小する方法、すなわち行動規範や規制の枠組み、教材といった「最良の実践とリソース」の交換についての提案もあった。そして最後に、共同研究を立ち上げる際に組織が検討すべき5つの行動提案を代表者たちが掲げて閉会となった。彼らが掲げた行動提案には、最良の実践とリソースを交換するのに使用できるオープンアクセス・ウェブサイトの開発、同時に2つの学位が取得できるプログラムの採用による学問的誠実性の標準化、盗品関連規則の多国間の不一致といった学者の移動に伴う倫理的ジレンマへの対応策の策定などがある。
懐疑論者からは、提案の内容は不十分で範囲も広く、不完全だとの指摘があるかもしれない。とくに国際的レベルで倫理綱領をいかに実施して遵守させるかについては何ら言及がなかった。しかし、研究倫理に関する議論や審議だけでも、最先端を行く研究者が違法行為の事例を認識し、違反に取り組むべく準備をするのに役立つだろう。科学者の移動の機会が増えることを考えると、大学は研究倫理の水準が低い場所として知られる国や地域のリスクを低減するよう努力する必要がある。結局のところ、もし科学が世界中で厳格になるのなら、指導者は少なくとも、新進の研究者が定職に就いて低水準の価値観を研究所に持ち込まないうちに、責任の文化のグローバル化に努めるべきである。