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バイオテクノロジー部門、進行中の金融危機で打撃:だが金融危機にはもう慣れっこに

2008年11月6日

Gene Russo
Naturejobs editor

Nature 455, 1273 (29 October 2008) | 10.1038/nj7217-1273a

他の業界と同じく、バイオテクノロジー業界も現在の金融危機での難しい舵取りに備えて気持ちを引き締めている。この業界は以前にも不景気を乗り越えたことから有利な立場に立てる可能性もあるが、やはり資金の締め付けが厳しく、しかもそれが雇用にも波及し、地域によっては不利な立場に立たされることも考えられる。

メリーランド州シェビーチェイスにあるニュー・エンタープライズ・アソシエーツのベンチャーキャピタリスト、David Mott氏は、バイオテック部門の現在の投資環境を「やや殺風景で干上がっている」と述べている。十分な投資がなければ、既存のバイオテクノロジー企業は会社を維持するのが難しくなり、新たに企業も設立しにくくなる。その結果、部門内部で雇用を生み出すのも厳しくなってくる。

しかし、2007年4月に156億ドルでアストラゼネカに買収されたバイオテック企業、メディミューンで最高経営責任者を務めていたMott氏は、業界は生き残る構えが十分にできているだろうと言う(すでに苦境に陥ってはいても)。直近では1990年代の初頭および半ばに最大の流動性危機が起きており、「極めて優秀な経営チームを抱えた極めて優秀な企業を築くのに利用できる資本はごくわずかだった」とMott氏は言う。要するに、この部門に従事する多くの人はすでに資本市場の干ばつを経験済みだということだ。Mott氏は「あの経験は何かと役に立つだろう」と話している。

もっと重要なのは、バイオテック部門は流動性の低い環境にすでに適応しているということだろう。この分野の金融モデルは2000年のハイテクバブルの崩壊後に変更を余儀なくされ、株式の公募も多かれ少なかれ姿を消した。バイオテック部門の投資家や起業家はもう第2のアムジェンやジェネンテックのような企業を設立しようとは思わない。そうではなく、普通は巨大製薬会社が先を争って購入してくれることを願いつつ、売却するための企業を設立しているのである。Mott氏によれば、このため、今日のバイオテック企業は「仮想企業」と化しているようだ。化学や臨床試験の管理をインドなどの国にアウトソーシングする企業がますます増えている。

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