金融危機が研究所に投資の見直しを迫る
2008年10月23日
Gene Russo
Naturejobs editor
Nature 455, 1001 (15 October 2008) | 10.1038/nj7215-1001a
金融危機があいかわらず世界を揺るがせているが、科学者の多くも間違いなくその影響を受けるはずだ。マサチューセッツ州のボストン大学は、いち早く雇用を凍結し、新しい建物の建設プロジェクトを中止した大学の1つである。ボストングローブ紙の10月1日付の記事でも、今後さらに多くの大学がそれに追随するだろうという米国教育評議会(ACE)のコメントを紹介している。
不況が長引けば、専任教員の代わりに非常勤スタッフを雇用するという慣行がさらに一般化するだろう。これは節約になるとして好まれるためである。授業料も値上げされる可能性があり、学生は教育ローンを組むのも難しくなることから、私立大学では学生を支援するために基金のかなりの部分を切り崩さざるを得なくなる。
かなりの打撃を受けている基金もある。医学研究支援などを目的とする公益信託団体で、ロンドンに拠点を置くウェルカム・トラストでは、基金が最大10%目減りし、約130億ポンド(230億ドル)になった。株式市場の暴落が主な原因である。ニューヨークにあるコールドスプリングハーバー研究所では、基金が5%程度減少し、3億ドルになっている(Nature 455, 712–713; 2008を参照)。また、多くの科学研究所の生命線である慈善的な寄付金も、今後は大幅に減少するものとみられる。
しかし、そんな中で健闘している組織もある。例えば、メリーランド州シェビーチェイスにあるハワード・ヒューズ医療研究所では、基金への影響は最小限にとどまっており、今のところプロジェクトを縮小する予定はない。また、景気低迷がさらに長引けば入学者数が増加すると踏む大学も多い。就職の目途が立たなくなると、大学への駆け込みが急増するからだ。
さらに、エネルギーや環境関連の研究はやはり長期的な成長が見込まれる。米国の大統領選候補者たちは、決まって代替エネルギーと気候変動プログラムへの巨額の投資を公約として掲げており、そのための支出は数々の「グリーンジョブ」を創出するだろうと述べている(Nature 455, 565; 2008を参照)。もちろん、多くの選挙公約は実現しないものだし、金融危機はまだ序の口である。すでに予算削減と闘っている研究者は、自分の研究所や研究分野の経済的繁栄を見守っていくのが賢明なのだろう。
英語の原文:Financial pressures are forcing institutions to rethink their investments