Nature Careers 特集記事

若手教員数の減少が深刻な結果を招く

2008年10月9日

Paul Smaglik
Moderator of the Naturejobs

Nature 455, 703 (1 October 2008) | 10.1038/nj7213-703a

米国教育評議会(ACE)の研究によると、米国の大学で若手教員数が減少すると、将来的に指導的任務を果たすのが困難になるという。大学課程をすべて設置している教育機関において、34歳以下のテニュアトラック教員が占める割合はわずか3%であり、学科長や学部長、学長になれる経験豊富な人材を次世代から探すのは難しくなる、と同評議会の報告書『はしごの段は多すぎる? 教員の人口統計と未来の高等教育のリーダーシップ(Too many Rungs on the Ladder? Faculty Demographics and the Future Leadership of Higher Education)』は記している。

高等教育は3つの大きな問題で揺れている。1つは、教員は1994年に定年退職制度が廃止されたときに比べると概ね高齢化しているが、退職を嫌がっていること。2つ目は、大学が非常勤や非テニュアトラック職により依存していること。そして3つ目は、学生が博士号を取得するのが後年になってからだということである。ポスドク課程が長引けば、それだけ指導的地位に就くまでに必要な経験を積む時間も短くなるわけである。

こうした事態には良い面と悪い面がある。若手教員の場合には競争が少なく、最終的に地位が上がっていけば好きな職に就けるが、一方で、彼らが退職年齢に達するまでそれを達成するチャンスが訪れないかもしれないのだ。つまり、現在45歳の教授には学部長になる――あるいは学長になる――チャンスがまだ十分にあるが、おそらく70歳になるまでは無理だということである。

そう簡単な解決策はない。大学も高齢の教員をはしごの最上段から無理やり落としたり、若手教授のために新しいポジションを創設したりするとは思えない。ただ、はしごの段をいくつか外して、または段と段の間隔を狭めて、現在の若手教員が学科長から学部長にもっと早く昇進できるようにせざるを得なくなるかもしれない。今日の行政にも、明日の大学のリーダーの指導を支援すること、あるいは、少なくともそういうポジションは待っているだけの価値はあると説得することはできるかもしれない。

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